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2017年の原油価格の見通し
吉田 哲
週刊コモディティマーケット
コモディティ(商品)をお取引いただく上でのコメント・アイディアを提供するレポートです。金をはじめとした貴金属、原油をはじめとしたエネルギー関連銘柄、とうもろこし・大豆などの穀物な…

2017年の原油価格の見通し

2016/12/22
・筆者の予想コアレンジ(通年)は、45~65ドル (2016年12月22日現在)
・トランプラリーが継続しているかどうかで予想レンジは場合分けされる
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・筆者の予想コアレンジ(通年)は、45~65ドル (2016年12月22日現在)
・トランプラリーが継続しているかどうかで予想レンジは場合分けされる
さまざまなメディアで株式相場、為替相場などの2017年の相場見通しが出ています、
筆者におきましては、コモディティアナリストの立場より、原油相場の見通しを述べたいと思います。

 以下はすべてレポート執筆時点(2016年12月22日)のものです。また、いずれも筆者の個人の考えを述べたものであります。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でお願いいたします。

 また、レンジを予想する上で根拠とした条件に変化が生じた場合は、レンジそのものが修正されます。その際は随時最新のレポートにてお伝えしていく予定です。

図:NY原油先物の価格推移 月足 (単位:ドル/バレル)

出所:CMEのデータより筆者作成

 

筆者の予想コアレンジ(通年)は、45~65ドル (2016年12月22日現在)

図:2017年の原油価格の推移イメージ (単位:ドル/バレル)

出所:筆者作成

 筆者は、原油価格の推移を考える上で「トランプラリー」が継続しているかどうかが大きなポイントになると考えています。

 ラリーが継続している場合、つまり株式等のマーケットのムードが良好で、経済活動が活発化し、「将来の原油需要の拡大が期待されるような状況」に置いては、減産の効果は上がりやすくなると考えられます。

 逆にラリーが終了した場合、つまり株式等のマーケットのムードは悪化し、経済活動が停滞傾向となり、「将来の原油需要の減少が見込まれるような状況」に置いては、減産の効果は上がりにくくなると考えられます。

 また、これは筆者の多分な憶測ですが“トランプラリーが、OPECの減産を誘引した一因になった”のではないかと考えております。

 ここ最近、OPECの原油の減産(非OPECとの協調を含め)が、トランプラリーというポピュリズムの台頭によって生じた潮流を増幅させる功労者であるように報じられているのを目にする機会があります。今後もOPECの減産が、原油価格を上昇させ、トランプラリーの継続に貢献すると指摘する声も聞かれます。

 このような記事を目の当たりにする度に筆者は、先進国・資源国の株式や通貨市場に恩恵をもたらすと期待される原油価格の上昇は、ある意味“大衆の要求”という面があるのではないか?と感じることがあります。

 もし、OPECが原油価格を減産合意のアナウンスで上昇させて大衆の願望を満たしているとすれば、OPECの減産もまた“大衆迎合”の一例であるのではないか?ということです。

 もちろん、OPECにおいては、迎合だけが減産の目的ではなく、自国の財政を回復させる、2018年とされるサウジアラムコのIPOに向けた準備を進めるなどの目的はあり、自国の都合のために減産を履行して原油価格をさらに上昇させることが必要な状況にあることは確かであると思います。

 ただ、景気拡大ムードを醸し出すこのトランプラリーの最中、OPEC内では、今減産合意を打ち出せば効率的に原油価格を上昇させることができるのではないか?そればかりか、ラリーを盛り上げることに貢献した“大衆の要求を満たした”という事実を作ることができれば、それにより大衆から信用を勝ち得ることができるのではないか?との思惑もあったのではないかと思うのです。(OPEC側からすればトランプラリーを利用して減産を実施するということ)

 逆にもし、11月30日の総会が決裂して減産を実施しないこととなり、その失望から仮に原油価格が下落してトランプラリーが冷やされた(株価等が大きく値下がりした)ならば、OPECは大衆の非難の対象になり、大衆のOPECへの信用は著しく低下していたのではないかと思います。

 この場合、その後再びOPECが減産または増産凍結を検討するというアナウンスをしたとしても、2016年の2月から4月半ば(増産凍結のアナウンス時)や、8月から11月(減産のアナウンス時)のように、アナウンスだけで原油価格が上昇することはないと考えられます。

 (筆者の妄想であると自覚をしてはいるものの)このような背景から、OPECは、自らと大衆の両方の思いを胸に減産に踏み切ったのではないか?と考えています。これは2016年11月30日のOPEC総会の前、減産合意は非常に困難であるとされていたにも関わらず合意に至ったことの説明の一つになるものと考えております。

 このようなOPEC減産とトランプラリーに関連があるという考えに基づき、2017年の原油価格を大きく左右する要因となると見られるOPECの減産の動向に触れる上で、トランプラリーが継続している場合とそうでない場合に分ける必要があると考えました。

トランプラリーが継続しているかどうかで予想レンジは場合分けされる

●通年で上値を抑える圧力
米国の経済情勢および金融政策、欧州の政治リスクの拡大などを背景とした「ドル高」および、原油価格が上昇した場合に顕著になると考えている「米シェールオイルの増産」等については、通年で上値を抑える圧力となる可能性があると考えております。ただ、ドル高については米国の政策において「ドル高是正」の動きが見られればこの限りではなく、むしろ「ドル高是正」の動きは原油価格下値を支える圧力に変わるものと思われます。

●トランプラリーが継続している場合の予想レンジ

①コア予想レンジ:50ドルから65ドル

②減産遵守、景気拡大期待発生時:55ドルから65ドル

 減産が守られていることへの安心感や、ラリーに端を発した景気回復ムード、それに2016年後半ごろからの主要国のPMI等の指標の改善を背景とした景気回復基調などから、52ドル前後という現在(2016年12月22日)の水準が一段引きあがったレベルで推移するものと考えています。

③減産への失望売り発生時:50ドルから55ドル
ヤミ増産の発覚や、5月や11月(もしくは12月)の定時総会、その他臨時総会等で減産が打ち切りになった場合などはコア予想レンジの下限付近での推移となると考えています。

④一時的な上振れ時:65ドルから80ドル

 このケースは、②の条件を満たしかつ②の上限付近で原油相場が推移しているということを前提に、トランプ大統領の政策における「金融規制の緩和」が実現し投機資金が“急激に”流入し、かつ現在NY原油先物市場において2017年後半以降の受渡しの限月で積み上がっているとされる生産者のヘッジ売りが“急激に”解消(買戻し)された場合の“非常に瞬間的な上振れ”を想定しています。

⑤一時的な下振れ時:40ドルから50ドル

 このケースは、③の条件を満たしかつ③の下限付近で原油相場が推移しているということを前提に、米国の経済情勢および金融政策、欧州の政治リスクの拡大などにより“急激に”ドル高が進行しかつ、急激に世界の原油需要が落ち込む見込みが生じた場合の“非常に瞬間的な下振れ”を想定しています。

●トランプラリーが終了した場合の予想レンジ

①コア予想レンジ:45ドルから55ドル

②減産遵守、景気拡大期待発生時:50ドルから55ドル

 減産が守られていることへの安心感など、原油価相場が強含む要素はあるものの、ラリーに端を発した景気回復ムードが見られなくなったため、ラリーが継続している場合に比べて一段低いレベルで推移するものと考えています。また、ラリーが終了していることによりリスクオンのムードが後退すると考えられることから、(ラリーが継続している場合に比べて)想定レンジの幅はやや縮小するものと考えています。

③減産への失望売り発生時:45ドルから50ドル

 ヤミ増産の発覚や、5月や11月(もしくは12月)の定時総会、その他臨時総会等で減産が打ち切りになった場合などはコア予想レンジの下限付近での推移となると考えています。

④一時的な上振れ時:55ドルから65ドル

 このケースは、②の条件を満たしかつ②の上限付近で原油相場が推移しているということを前提に、トランプ大統領の政策における「金融規制の緩和」が実現し投機資金が“急激に”流入し、かつ現在NY原油先物市場において2017年後半以降の受渡しの限月で積み上がっているとされる生産者のヘッジ売りが“急激に”解消(買戻し)された場合の“非常に瞬間的な上振れ”を想定しています。

⑤一時的な下振れ時:35ドルから45ドル

 このケースは、③の条件を満たしかつ③の下限付近で原油相場が推移しているということを前提に、米国の経済情勢および金融政策、欧州の政治リスクの拡大などにより“急激に”ドル高が進行しかつ、急激に世界の原油需要が落ち込む見込みが生じた場合の“非常に瞬間的な下振れ”を想定しています。

 トランプラリーが一度終了した後、2017年内に同ラリーが復活した場合は、予想の目安を「トランプラリー継続中」に戻します。

 また、予想レンジ以外に上図では価格帯(ゾーン)についても触れております。

●世界の原油需要減少、および「北米(米国・カナダ)生産圏」の台頭、中東・ロシアシェア低下警戒ゾーン
(2017年に原油価格がこのゾーンに入ることは想定しておりませんが)この100ドル/バレルのゾーンはかつて「原油が高い」と言われていたころの価格帯です。

 このゾーンでは世界の原油需要が減少する懸念が生じるとともに、高値を背景に非従来型の原油の生産が急激に加速する可能性があります。そのため非従来型原油の生産が盛んな北米(米国とカナダ)の生産が拡大することが考えられ、“北米生産圏”はOPECやロシアのシェアを脅かす存在になる可能性があると考えています。

●米シェール関連指標の増減ゾーン

 このゾーンの幅は非常に広いですが、2016年に原油価格が40ドル近辺だった頃より、米国内のシェールオイル主要生産地区における新規開発のバロメータとされる“稼動リグの数”や、同地域において比較的短期間で原油の生産を開始できるとされる“仕上げ後の油井の数”が増加してきました。

 このことより、40ドルが米シェールオイルの生産に向けた準備が開始できる価格帯であると考えられるため、このゾーンの下限を40ドルとしています。上限は上述の“北米生産圏の台頭”と同様となります。

●自律反発ゾーン

 このゾーンは2008年の金融危機後の歴史的な安値レベルです。2016年2月にもこの水準(やや下まで)下落する場面が見られました。多くの生産者がコスト割れを起こすレベルであると考えられ、このゾーンに至った場合、過去の値動きが示す通り、比較的短期間で価格は反発する展開になるものと思われます。

 また、以下のとおり2017年に予定されているイベントおよびデータ公表のスケジュールを記してみました。

●OPEC総会は以下のとおりです。
2017年5月25日(木) 第172回OPEC定時総会 オーストリア ウィーンにて

 おそらくこの総会で2017年1月から行った減産を、継続するかやめるかの判断がなされるものと見られます。

 また、11月下旬もしくは12月上旬に上記の次の定時総会が開催されるものと思われます。さらに、定時総会以外に2016年の9月のように2017年も臨時総会が開催される場合があります。

 2017年は、2016年のように“増産凍結”“減産”を実施するかどうか?という施策を行う行わないを判断するために総会が行われるのではなく、実施中の施策について、減産を遵守しているかどうかの進捗を確認したり、減産のルールを議論さらには変更するために総会が開催される可能性もあるのではないかと思います。

 いずれにせよ、何が話し合われるか現段階では不明ですが総会の決定事項は原油価格の値動きの大きな要素となることがありますので注意が必要です。

 また、月次、週次で公表される重要なデータの公表スケジュールは以下のとおりです。
(いずれも日本時間です)

●毎月10日前後
前月までの世界および国別の需給データと翌月以降の見通し
発表元:米エネルギー省(EIA)
   :国際エネルギー機関(IEA)
   :OPEC

●毎月15日前後
米シェールオイル主要地区の原油生産量と見通しおよび同地区の仕上げ前後の生産前の油井の数
発表元:米エネルギー省(EIA)

●毎週水曜
世界・米国の原油在庫・生産量のデータ
発表元:米エネルギー省(EIA)

●毎週土曜
欧米の先物市場の投機筋等のポジション状況
発表元:米商品先物取引委員会(CFTC)

北米等の稼働リグ数

発表元:ベイカーフューズ社

 毎月10日前後に公表される前月までの世界および国別の需給データと翌月以降の見通しには、まさに注目のOPEC・一部の非OPECを含んだ各国の原油生産量の実数値が含まれています。

 2017年1月より6月まで減産実施で合意している訳ですが、その合意内容が守られているか?について追うことができるデータとなります。

 具体的な公開スケジュールは以下のとおりです。

図:OPEC・非OPEC諸国の月次の原油生産量のデータの公表スケジュール

出所:各データソースを元に筆者作成

 2017年1月の生産量は、2017年2月に公表されますが、最も早いEIA(米エネルギー省)のものは2月7日となる予定です。

 減産は合意内容によれば2017年1月から6月まで(延長の可能性もあり)とされておりますので、6月までの全貌を把握するためには7月13日のIEAのデータまで見ていくことになりそうです。

 2017年の原油相場も目が離せない状況が続くものと思われます。

 考え得るさまざまな事象をできるだけ排除せずに、2017年も原油相場と向き合っていきたいと思います。

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