3.会社側は来期2022年3月期に向けて強気な見通しを示す
会社側は6月18日付けで公表した2021年3月期業績予想、売上高1兆2,800億円(前年比13.5%増)、営業利益2,750億円(同15.9%増)を維持しました。ただし、足元では凹凸がありながらも半導体製造装置の受注、出荷が順調に進んでいるもようなので、上方修正の可能性もあります。楽天証券では、2021年3月期を売上高1兆3,000億円(同15.3%増)、営業利益2,850億円(同20.1%増)と予想します(前回予想と同じ)。
アプリケーション別に見ると、今2Q以降は変化が予想されます。メモリ向けは今1QはDRAM向け、NAND向けともに売上が増えました。ただし、今2Q以降はスマートフォン需要の減速とデータセンター投資の一巡によってDRAM向けの伸びが鈍化する見通しです(半導体前工程装置市場全体では2020年暦年は前年比約10%増となる見込みですが、DRAM向けは微増になる見込みです)。
一方、NAND向け投資は今期も増加が予想されますが、これはデータセンター、パソコンなどにおけるNAND需要の拡大によるものです。ロジック(パソコン、サーバー用CPUやスマホ用チップセット)、ファウンドリ(半導体受託製造業者)向け投資は、HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング。高性能パソコン、高性能サーバー用CPU、グラフィックプロセッサーなど)需要がテレワーク需要の増加等によって予想よりも拡大しているため堅調です。
このため、2021年3月期通期では、会社予想を上回る業績が期待できそうです。
また会社側は、今期も新型コロナウイルス感染症の影響で半導体製造装置の出荷が抑えられる可能性があり、その分は来期2022年3月期の出荷になると考えています。来期は来期で5G、AI、HPC、IoTの各分野の需要拡大が期待できるため、今期分の繰り延べを合わせると来期の増収率は今期よりも高くなり、好業績となる可能性があります。
ただし一方で、新型コロナウイルス禍の長期化、米中摩擦の影響なども考慮する必要があります。そのため、楽天証券では、前回の来期業績予想、売上高1兆5,000億円(前年比15.4%増)、営業利益3,500億円(同22.8%増)を維持します。引き続き順調な業績拡大が予想されます。
半導体製造装置の種類では、EUV露光装置向けコータ/デベロッパで100%の市場シェアを持っている強みを生かして、エッチング、洗浄、成膜の各分野を伸ばす方針です。
4.今後6~12カ月間の目標株価を、3万4,000円から3万7,000円に引き上げる
今後6~12カ月間の目標株価を、前回の3万4,000円から3万7,000円へ引き上げます。楽天証券の2022年3月期予想EPS 1,678.2円に想定PER20~25倍を当てはめました。順調な業績拡大が続くと予想されるため、来期の想定PERを前回の20倍から今回は20~25倍に引き上げます。引き続き投資妙味を感じます。
アドバンテスト
1.2021年3月期1Qは1%増収、11%営業減益
アドバンテストの2021年3月期1Qは、売上高667億2,500万円(前年比0.8%増)、営業利益134億5,800万円(同11.2%減)となりました。全社受注高は会社予想の620億円を下回る615億円(前1Qは659億円、前4Qは907億円)となりました。売上高も会社予想の700億円を下回りましたが、経費節減によって営業利益は会社予想の130億円を上回りました。
半導体テスタの受注動向を見ると、SoCテスタ(ロジック・テスタなど)は高水準で堅調だった前4Q329億円から今1Qは250億円へ大きく減少しました。SoCテスタ売上高も前4Q305億円から今1Q251億円へ減少しました。新型コロナによる人の移動制限のために一部製品に売上遅延が発生しました。スマホ販売鈍化によってスマホ向けテスタの納入延期もありました。
また、アメリカの対中国取引規制によって、9月15日からファーウェイに対してTSMC等の大手半導体メーカーが半導体出荷を停止するため、それ以降の半導体需給を懸念したOSAT(半導体後工程専門業者。ダイシング(回路を描いたウェハを四角いチップに切り出す)、組立、検査などの後工程のみを専門に行う業者。主にロジック半導体(SoCなど)を扱う)がSoCテスタへの投資を手控え始めたもようです。これらのマイナス要因がSoCテスタの受注、売上の減少につながりました。
一方、メモリ・テスタ受注は、データセンター向けの引き合いが強く、会社予想以上の受注高となりました。受注高は前4Q193億円から今1Q174億円に減少しましたが、前4Qに前倒し発注があったため、これを考慮すると今1Qの受注は高水準でした。また売上は前4Q145億円から今1Q172億円に増加しました。
この他、サービス他が受注は前3Q159億円、前4Q260億円から今1Q109億に減少しましたが、売上高は同じく105億円、131億円、159億円へ増加しました。通常の保守サービスに加え、前期から本格的に開始したシステムレベルテスト(複数の半導体の組み合わせテスト)の増加が寄与しました(前4Qの受注急増はシステムレベルテストの受注増加によるもの)。
表4 アドバンテストの業績
グラフ2 アドバンテストの半導体テスタ受注動向
グラフ3 アドバンテストの全社受注高
表5 アドバンテストの受注高
表6 アドバンテストの売上高