景気は循環する、景気後退期は「買い場」
私は、景気が悪くなってくると、株に強気になります。景気が良過ぎると、逆に、弱気になります。その感覚は私の過去25年間のファンドマネージャー経験から出ています。
1987年から2013年まで、私は投信・年金基金・海外ファンドなどの日本株運用を担当していました。日経平均株価が約2万円の時に運用を開始しました。その後、バブルの高値3万8,915円から、リーマン・ショック後の安値7,054円まで見てきました。そして、ファンドマネージャーを退任した2014年1月には、日経平均は約1万6,000円でした。
というと、バブル崩壊後は全く稼ぐチャンスがなかったように聞こえるかもしれません。そんなことはありません。バブル崩壊で、日経平均が右肩下がりで下がっていた「失われた20年」ですら、景気が悪い時に景気敏感株を買って景気が良くなってから売れば、大きな利益をあげることができました。以下のチャートをご覧ください。
平成30年間の日経平均株価:1988年末~2020年7月22日、赤で囲んでいる部分は景気後退期
株価は、景気循環よりも半年から1年先に動きます。景気後退期に入る前、まだ景気拡大期にあるうちに株は下げ始めます。景気後退期になってからもしばらく株は下げ続けますが、そこは買い場がどんどん近づいていく局面です。次の景気回復が視野に入るころから、株は反発に転じます。後から振り返ると、景気後退期の後半は、良い買い場だったと言えます。
7月23日の日本経済新聞によると、「内閣府は、2012年12月に始まった景気回復局面が18年10月に終わり、景気後退に入ったと認定する方針」です。私の認識と、ほぼ一致します。すると、2018年10月が景気の「山」で、2018年11月以降、現在まで1年9カ月近く、景気後退期が続いていることになります。
今回の景気後退は、2つの複合要因によるものです。2018年末~2019年は、米中対立激化による製造業を中心とした景気後退でした。2019年末には、米中交渉が「第一段階の合意」に達すれば、世界景気が回復に向かう期待が出ました。ところが、2020年には、戦後最悪の世界景気落ち込みが待っていました。それが、世界を苦しめている「コロナ・ショック」です。
近年の世界景気後退は、1年ちょっとで終わることが多いが、今回は、米中対立にコロナ・ショックが追い打ちをかけた形で、長期化しています。
それでも、私は、メインシナリオでは、2020年が循環的な世界景気回復の年になると考えています。
過去の経験則では、みなが弱気になったところから回復が始まっています。以下は、近年の事例です。
【1】1998年の世界景気後退(新興国危機)
中南米・アジアの通貨危機が、ロシアにも波及。景気好調が続いていた米国景気も悪化の兆し。1999年は世界恐慌になると言われました。ところが、実際には99年から世界景気は回復に向かいました。
【2】2001年の世界景気後退(ITバブル崩壊)
ITバブル崩壊で世界景気の後退が続く中、9月11日に米国で同時多発テロが起こりました。ITバブル崩壊に同時多発テロが追い打ちをかけて、2002年は世界恐慌になると言われました。ところが、実際には02年から世界景気は回復しました。
【3】2008年の世界景気後退(リーマン・ショック)
「100年に一度の不況」と言われ、不況の長期化が予想されていました。ところが、実際には09年4月から世界景気は回復しました。