来年の景気回復、3つのドライバー
今、経済再開で世界景気に回復の期待が出ていますが、経済再開による感染拡大に歯止めがかからないこと、さらに米中対立が一段と激化しつつあることから、来年の景気回復などあり得ない、と感じている方も多いかと思います。
それでも、私は来年回復をメインシナリオとして想定しています。3つの回復ドライバーがあります。
2021年に予想される3つの世界景気回復ドライバー
【1】新型コロナ、ワクチン開発成功で徐々に収束に向かう
メインシナリオでは、米国・欧州・中国で開発を急いでいる予防用ワクチンのいくつかが成功し、2021年には数億人レベルでワクチン供給が可能になると想定します。日本も、英国または米国で開発されたワクチンが供給されることを前提とします。
そんな簡単にワクチンができるはずがないと考える専門家もいます。ワクチン開発に2年以上かかると、世界景気回復の時期は後ずれします。それは、リスクシナリオとして考えます。
【2】第四次産業革命、進む
2021年にかけて、世界的にAI(人工知能)・IoT(モノのインターネット化)・ロボット・5G(第5世代移動体通信)を活用した、技術革新が進むと考えています。こうした、技術革新を、第四次産業革命と呼びます。
2020年は、コロナ・ショックにより、戦後最悪の世界景気落ち込みに見舞われたため、第四次産業革命の進展が一時的に停止しました。ただし、コロナ・ショックがあったために、リモートワーク(在宅勤務)、リモート会議、Eコマースが普及加速しました。コロナ収束後は、第四次産業革命が一段と加速すると考えられます。
【3】資源安メリット 発現
2020年は、原油など資源が急落したショックから世界経済が落ち込みましたが、21年はそのショックから世界経済が立ち直り、逆に、資源が下がった恩恵で消費が回復すると予想しています。
資源価格急落直後は、資源国だけでなく、資源の輸入国(日本や中国、欧州など)でも、景気・企業業績が悪化します。日本を例にとって説明します。資源急落直後は、資源安メリットが経済に及びません。急落前に購入した高値の在庫が残っているからです。石油・化学・鉄鋼・非鉄産業で、高値在庫をかかえたまま資源価格が急落したことによる、在庫評価損が発生し、日本の企業業績を悪化させます。
ただし、資源急落から1年くらいたち、資源がゆるやかに反発する局面では、資源安メリットが出ます。高値在庫が無くなり、原料安メリットが経済全体にいき渡るからです。