感染拡大のリスクシナリオ

 下表がIMF、世銀、OECDが予測した経済成長のリスクシナリオです。(1)が感染収束する基本シナリオで、(2)が感染拡大する場合のリスクシナリオです。

IMF、世銀、OECDのリスクシナリオ(GDP成長率)

    IMF 世銀 OECD
(1)終息 2020年 ▲4.9% ▲5.2% ▲6.0%
2021年 5.4% 4.2% 5.2%
(2)拡大 2020年 ▲4.9% ▲8.0 ▲7.6%
2021年 0% 1.0% 2.8%
注:IMFは2021年初めに感染第2波が発生するシナリオ。世銀・OECDは2020年中に感染が再拡大するシナリオ

 IMFは2021年初めに新型コロナウイルスの感染第2波が発生した場合、2021年の景気は回復せず、+5.4%のGDP成長率がゼロ%になると予測しています。

 世銀は2020年中に感染が再拡大するリスクシナリオで予測し、2020年の段階でGDP成長率は▲5.2%から▲8.0%と景気は悪化、2021年は+4.2%の予測が+1.0%に鈍化すると予測しています。

 OECDも2020年中に感染が再拡大するリスクシナリオで予測しています。2020年の段階で▲6.0%から▲7.6%に景気は悪化し、2021年は+5.2%の予測が+2.8%に鈍化すると予測しています。

 いずれにしてもIMFや世銀、OECDも感染再拡大や第2波が発生しても、2021年は連続してマイナス成長になるのではなく、ゼロもしくはプラス成長と予測しています。これが楽観的な見方かどうか、今後注目していく必要があります。経済見通しは数カ月に一度改訂されるため、その時にリスクシナリオもどのように変化しているのか、注目です。

 ただ、経済見通しの基本シナリオは感染収束のシナリオですが、現状を見ると、いまだ感染者が拡大している状況であり、かつ感染者の増え方が加速しています。このままだと「感染収束」という基本シナリオはかなり遠のきそうです。

 感染拡大が収まらないため米国の景気回復が遅れるとの見方がマーケットで台頭し始めているとコラムの冒頭で述べましたが、感染者増加に加えて経済活動の再規制が強化されれば、景気回復が遅れるとの見方だけでなく、回復期待そのものが後退することも予想されます。経済活動の再規制がプラスに働き、感染者増加が頭打ちとなればいいのですが、いまだマスク論争や外出自粛論争をやっている米国の状況ではあまり期待できないかもしれません。