5.遊びの世界では、PS5とリアルエンタメのオンライン化に注目したい
新型コロナウイルスの感染拡大が起こる前は、日本でも欧米でも、映画、音楽ライブ、演劇、テーマパークなどのリアルエンタテインメント(外出しなければ体験できない遊び)が全盛時代を迎えていました。グラフ5は日本のライブエンタテインメント市場の伸びを示したもの、グラフ6は世界最大の音楽、演劇プロモーターであるライブネイションエンタテインメントの売上高をみたものです。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大による営業自粛、休止によって、日本だけでも1億人以上、欧米で6億人以上いると思われるリアルエンタメのユーザーは遊ぶ場所がなくなりました。
そして彼らの一部が向かったのが日米欧合わせて年間約4,000万台を販売している家庭用ゲーム市場でした。ハードウェアの供給に対してはるかに大きい需要が発生したため、ニンテンドースイッチもプレイステーション4も直ぐに品不足になりました。特に、初心者から上級者まで遊べるゲームを数多く揃え、「あつまれ どうぶつの森」が発売されたニンテンドースイッチに需要が集まりました。その結果、世界的にニンテンドースイッチは深刻な品不足に陥りました。
この品不足は今も続いています。アメリカでは3月下旬から映画館が全面的に閉鎖されましたが、4月下旬から州によっては徐々に再開されています。ただし、全国的に再開されるのは8月からになりそうです。また劇場は大幅に再開が遅れており、ブロードウェイの再開は来年1月になりそうです。そのため、アメリカでは家庭用ゲーム機に対する大きな需要が続くと予想されます。ニンテンドースイッチだけでなく、今年クリスマスシーズンに発売が予定されているPS5への需要も大きくなると思われます。
PS5は、ブルーレイディスクが使えるタイプとオンラインダウンロード専用タイプの2種類がありますが、いずれも価格は未公表です。ただし、報道によると、7月15日付け日経新聞電子版は2020年内のPS5用部品購買を900万台分としています(4月には一部の部品会社に600万台と伝えていたようです)。また、7月15日付けブルームバーグは関係者の話として年内のPS5生産台数を1,000万台としています。
いずれにせよ、アメリカ中心に家庭用ゲーム機に対するかなり大きな需要があることは確かです。ただし、欧州の場合は、深刻な不況が懸念されることから家庭用ゲーム機がどこまで売れるか疑問な点もあります。
日本の場合は、5月中旬から一部の映画館が再開し、7月からは一部の演劇が再開しました。音楽ライブはネット配信が主体で、演劇でもネット配信が増えています。7月には新宿の劇場で感染騒ぎが起きており、劇場に行くのに慎重な人も多いと思われます。このため、家庭用ゲーム機への需要は大きいと思われますが、任天堂はニンテンドースイッチを欧米中心に出荷しているため、品不足は当面続くと思われます。
また、PS5の大量生産が実現するならば、価格にもよりますが、PS5への関心が大きくなると思われます。リスクはありますが、ソニーに注目したいと思います。任天堂は、2021年3月期1Q決算において、会社側のハード増産への姿勢を確認したいと思います。会社側がハード増産に対して中途半端な姿勢をとるならば、大きなビジネスチャンスを失うことになりかねません。
また、劇場クラスターというアクシデントはありましたが、音楽ライブと演劇の再始動は、日本にとって重要なテーマです。オンライン配信とリアルの音楽ライブ、演劇を組み合わせることで、収益に幅を付けることが可能になります。東宝とアミューズに注目したいと思います。
グラフ5 日本のライブエンタテインメントの年間売上高
グラフ6 ライブネイションエンタテインメントの売上高
表5 「オンライン経済」関連銘柄
本レポートに掲載した銘柄:日本電気(6701)、富士通(6702)、伊藤忠テクノソリューションズ(4739)、ネットワンシステムズ(7518)、アンリツ(6754)、村田製作所(6981)、TDK(6762)、東京エレクトロン(8035)、アドバンテスト(6857)、レーザーテック(6920)、ディスコ(6146)、ソニー(6758)、任天堂(7974)、東宝(9602)、アミューズ(4301)