“5本の矢”!?ますます現実味を帯びる、金価格、年内2,000ドル。

“3本の矢”は、戦国時代の大名、毛利元就が、3人の息子たちを結束させるために説いた言葉と言われています。矢は1本では折れやすいが、3本束になれば折れにくい、毛利家をより強固なものにするためには、息子たち3人が力を合わせて束になることが必要、ということです。現代では、1つの政策では大きな目標を達成することが難しいが、3つを同時進行させれば目標達成の可能性を高めることができる、という意味で、政治家がこの言葉を用いたことがありました。

 ゴールを目指すのであれば、1つではなく、複数から、サポートがあった方がよい、とも言えます。

 筆者は、今月に入り、金相場は2,000ドルを目指すのか? と複数の人に聞かれ、その可能性は低くなく、むしろ高いと考えていると返答をしています。金価格が2,000ドルを目指す上で必要とみられる5つの条件が、すでにそろっていると考えているためです。矢は3本どころか、5本もあるわけです。

図:金相場を今後、支えると見られる5本の矢

出所:筆者作成

  “矢”は、有事のムード、代替資産、代替通貨、中国・インドの宝飾需要、中央銀行の5つで、これら5つがまさに、束になっていると、筆者は考えています。有事のムード、代替通貨、中央銀行の3つについては、中国も、中国以外も、それぞれが金相場を支える要因を持っています。

 代替資産については、中国では上海総合指数が年初来高値を更新するなど、株価が堅調推移しているため金にとってはマイナス材料ですが、先進国や中国以外の新興国の株価指数は上値が重かったり、不安定だったりするため、世界全体でプラス材料と言えます。

 また、中国・インドの宝飾需要については、先述のとおり、目先、中国の個人需要が回復する可能性があります。平時は、金の個人需要においては、中国の方がインドより多いため、中国の需要回復が、第1波の最中にあるインドでは同需要の減少分を相殺し、さらに上乗せ分を作る可能性があります。

 上記のように考えれば、中国が新型コロナ第1波を乗り越えた、中国を除く世界全体が第1波(部分的には第2波)の最中ある、という2つの条件が重なっていることで、“5本の矢”が束になっていると言えます(中国が第1波を乗り越えていない場合、4本目の矢はマイナス材料のままです)。

 “矢が束になること”は、大きなゴールを達成するために重要な要素です。5本の矢が束になった金相場は、2,000ドル、という史上最高値に挑む準備が整ったと言えるのではないでしょうか。筆者はそう思います。

図:金価格の推移

出所:CME(シカゴ・カーマンタイル取引所)、国内大手地金商のデータをもとに筆者作成