アフター“コロナ第1波”、存在感を示す中国で期待される、個人の金消費回復

 統計上、第1波を“アフター(過去の出来事)”と呼べる中国は、感染拡大にあえぐ多数の国(中国を除くほとんどの国)と一線を画します。この特異な中国の存在が、目先(具体的には2020年下半期)、金相場に価格上昇要因として作用する可能性があると、筆者は考えています。

 以下は、中国の金の個人需要(宝飾需要+地金やコイン需要)の推移と、金の全消費に占める割合です。

図:中国の金の個人需要(四半期) 単位:トン

出所:World Gold Councilのデータより筆者作成

 先述のとおり、中国における新型コロナ第1波は、2月と3月に起きました(ピークは2月下旬)。上図のとおり、2020年の2月と3月があてはまる、2020年第1四半期(この場合は1月から3月)の同国の金の個人需要は、この10年間の最低でした。

 前期に比べて106トン、中国の金の個人需要が減少しました。この量は金の全需要のおよそ10%です。中国で起きた新型コロナ第1波が、世界の金需要のおよそ10%を減少させた、と言えます。

 ここ最近、さまざまなメディアで「7割経済」という言葉を目にします。新型コロナウイルス起因で減少した需要は、回復しても7割程度か、という考え方です。この7割経済を、金の需要にあてはめると、第1波を超えた中国における個人の需要が回復し、世界の金の需要が7%程度回復するシナリオが描けます。

 回復するタイミングはいつか、と問われれば、統計上、足元、中国で大規模な感染拡大が起きていないこと、中国の各種経済指標が2月や3月の最悪期を脱して改善が目立っていること、中国の株価指数が年初来高値を更新していることなどを踏まえれば、中国で今、7割経済が起きている(あるいは非常に近い将来起きる)とみられ、中国の金の個人需要の回復は、目先早々に、起きる可能性があります。

 中国の金の個人消費の回復は、量の回復もさることながら、市場に“買い手が戻って来た”という印象をもたらし、ムードの回復にも、貢献すると考えられます。