あとは計算!
まず、老後の一年当たりの支出を現役時代の支出の一定倍率(x)で考えます。すると、現役時代の支出は手取り所得(Y)に1から必要貯蓄率(s)を引いた倍率を掛けると求める事ができます。すると、老後の支出(年間)は、「老後の対現役時代支出比率(x)×現役時代の平均手取り収入(Y)×現役時代の支出比率(1-s)」となります。
これを、定期的に入る年金等の収入(P)に加えて一年あたりに可能な資産取崩額(D)の合計で賄うと考えます。
数式で書くと、
xY(1−s)=P+D …(式1)
です。
老後を基準に、式の左辺は「使いたい金額」、右辺が「使う事のできる金額」だと読む事ができます。
次に、取り崩しが可能な資産額(D)は、今後の現役時代の貯蓄額に現在持っている資産額を合わせたものなので、将来に想定する平均の手取り所得(Y)に必要貯蓄率(s)を掛けて現役年数(a)倍したものに計画時点で持っている資産額(A)を加えて、その合計を老後の想定年数(b)で割る事で計算できます。
数式で書くと、
D=(sYa+A)/b …(式2)
です。
これは老後に保有資産を取り崩して使うことが可能な額の1年分です。
式が2本に分かれましたが、式1の(D)に式2の右辺を代入すると1本にまとまるので、後はひたすら求める「必要貯蓄率(s)」について整理するだけです。分数の計算なので少々面倒ですが、気長に整理してみてください。
なお、この計算では、将来の物価変動、賃金変動、資産の運用利回りを無視しています。大まかには「物価変動=賃金変動=運用利回り」を前提としています。実は運用利回りを反映できる算式も作ってみたのですが、「将来の運用益獲得をあてにして、現在の支出が過剰(貯蓄が過小)になる」ことは、老後に向けた行動としてやってはいけないことの筆頭です。運用の利益は、それを大きく稼いだ後に資産額(A)に加えて計算をやり直してください。
話題になった報告書にも「資産寿命」という言葉が出て来ましたが、資産寿命を延ばすための手段としては、「計画的な資産の取り崩し」を割り当てる事が正しく、「資産運用でより高いリターンを目指す」ことを割り当てることは不適切です。