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 米中対立激化などを背景に国内企業は海外生産拠点の中国への一極集中の是正を進めてきました。しかし、新型コロナの感染が米国や新興国など世界で拡大する中、生産停止や移動制限などにより海外生産比率の高いマスクなどが入手困難になるなど、海外生産への過度な依存のリスクが認識される状況となりました。国内企業は海外にある製造工程の『国内回帰』などサプライチェーン(供給網)の再編に動き始めています。

【ポイント1】新型コロナの感染により海外生産のリスクが顕在化

 新型コロナの感染が米国や新興国など世界各地で拡大し、海外工場の停止が相次ぎました。この影響を受け、海外生産比率の高いマスクや医療関連製品などが入手困難になるなど、国民の生活にも大きな影響を与えました。こうした状況を受けて国内企業は海外の製造工程の『国内回帰』を検討し始めました。

 政府も新型コロナの影響で輸入に頼っていた製品の調達が難航したことなどに対処するため、2020年度第1次補正予算で、生産拠点の『国内回帰』を促す補助金に2,200億円を計上しました。

【ポイント2】企業の『国内回帰』への取り組みが始まる

 生活用品大手のアイリスオーヤマは3月31日に、政府の要請を受けて、国内工場に設備を新たに設けてマスク生産を『国内回帰』させ、大規模な増産を実施すると発表しました。国内の工場での生産量は当初、月産6,000万枚としていましたが、4月22日には同1億5,000万枚まで増強すると発表しました。自動化を徹底して競争力を高めます。

 半導体大手のロームや液晶パネル大手のジャパンディスプレイは報道によると海外にある製造工程の『国内回帰』を検討し始めました。基板に回路を形成しチップをつくる前工程は、自動化が進み国内拠点で手掛けているのに対して、関連部材を組み付ける後工程は人手がかかるため、海外で展開するケースが多くなっています。工程の自動化を進め、後工程でも『国内回帰』を進める方針です。

【今後の展開】『国内回帰』には、自動化などが不可欠

 国内企業は為替リスクの抑制や、コスト低減による国際競争力の引き上げのために海外生産を拡大してきました。今回新型コロナの感染拡大で海外工場の停止が相次いだことで、国民の安全にかかわる製品などを中心に『国内回帰』と共にサプライチェーンの見直しが進みそうです。ただ、『国内回帰』には徹底した自動化などコスト競争力の確保が必要です。トヨタ自動車や村田製作所など国内生産を重視しつつ、強い競争力を維持している企業もあり、各企業の取り組みが注目されます。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。