何か落とし穴はないか?残る懸念材料の検証

「世界の株式市場は、数々の悪材料を無視して上がり続けている」という人もいます。今ある悪材料を改めて、検証してみます。

【1】世界景気が戦後最悪のピッチで悪化しているのを無視している?

 確かに、2020年前半(1~6月)は、リーマン・ショックを上回る、戦後最悪の景気後退となっています。それを織り込んで、2~3月は世界の株式市場が暴落しました。ただし、2020年後半(7~12月)の世界景気は、一転して、急回復する可能性が出てきました。中国、米国、欧州、日本で、経済再開が進むにつれて、回復が見込まれます。今の世界株高は、年後半の世界景気回復を織り込む動きと考えられます。

【2】ブラジル・アフリカなどの新興国で感染爆発が起こっている問題を無視している

 経済規模の大きい先進国(米国、中国、日本、欧州)で感染鈍化・経済再開が進めば、新興国の経済活動が落ちこんでも、世界景気や世界の株式市場に与える影響は、必ずしも大きくないと言えます。

【3】経済再開する米国、中国、日本、欧州で感染が再び拡大するリスクを無視している?

 感染拡大しても、再び、世界中で都市封鎖を行うことはないと考えられます。都市封鎖のコストがあまりに大きいことが分かった今、感染の二次拡大があったとしても、ウィズ・コロナで経済を回していくしかないとの社会的コンセンサスができつつあると考えられます。半年~1年後に、予防用ワクチンが利用可能になるまで、コロナと共存の知恵が求められています。

【4】黒人暴行死事件をきっかけに全米に抗議デモが広がり一部が暴徒化、ニューヨーク市などで夜間外出禁止令が出されている問題を無視している?

 暴行死にかかわった警察官が逮捕されていることから、暴動は少しずつ収束する可能性もあります。コロナ不況で経済弱者である黒人などの解雇が増える中で起こった事件だっただけに大きな暴動に発展したが、米経済が回復に向かえば、少しずつ収束に向かう可能性もあります。

【5】米中対立が再び、激化する兆しがあることを無視している?

 米中対立で、世界経済の分断が進む可能性があり、重大な懸念材料となっています。ただし、米大統領選が終わるまでは、トランプ米大統領は、株価を暴落させないように気を使うので、当面は、決定的な対立は避けられると考えられます。