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 6月12日に“Special Quotation”(『SQ』)を迎えます。前回の3月13日の『SQ』は新型コロナの世界的な拡大などを背景にパニック的な売りから日経平均株価は急落、ボラティリティーも極めて高水準となる中で迎えました。その後3月19日には年初来安値となる1万6,552.83円となりました。今回は、ショートポジションが異例な水準まで積み上がり、『SQ』前後まではそのショートカバーが引き続き株価の戻りをけん引しそうです。

【ポイント1】『SQ』とは先物・オプション取引を決済するための特別清算指数

『SQ』前は変動性が高まる傾向

 6月12日に株価指数先物とオプション取引の『SQ』を迎えます。『SQ』とは株価指数の先物取引やオプション取引などを、決済期日で決済するための「特別清算指数」のことを指します。

 投資家は『SQ』に向けて多様なポジションの決済等の対応を迫られます。『SQ』前に何らかの要因で株価が変動した場合にポジションを一気に解消する動きが出て、株価の変動率が大きくなる傾向があります。

【ポイント2】テクニカル指標が異例の水準後反発

ショートポジションは高水準

 テクニカル指標をみると、日経平均ボラティリティー・インデックスは、3月16日には、60.67%に上昇、5月11日には28.01%に低下しました。値上がり値下がり銘柄の割合を示す騰落レシオ(25日移動平均)は、3月16日に40.12%に低下、6月2日には150.78%まで上昇しました。これらの数値の変化から、今回の相場変動が大きなポジション調整による急速なものであったことが分かります。

 日経平均株価は、こうしたポジションの買戻しがけん引して急反発していますが、ネット裁定残高は5月29日時点で▲7.14億株で依然異例な状況にあり、ショートポジションはなお高水準にあると想定されます。

【今後の展開】『SQ』前後まではショートカバーが日本株の戻りをけん引か?

 ショートポジションの内訳をみると、日経平均先物中心に売りが出たため、ネット裁定売り残は日経平均型の割合が高まっています。また、日本銀行は3月16日にETF(上場投資信託)の購入目標額を12兆円に倍増を決めましたが、日銀の買いは大部分がTOPIX(東証株価指数)のため「日経平均売り・TOPIX買い(NT取引)」の取引が活発化し、そのポジションの解消も予想されます。この結果、『SQ』に向けて日経平均中心のショートカバーが継続して、株価の戻りをけん引するとみられます。ただ今回の株価反発は異例の水準となったショートポジションの買戻しが株価の戻りを増幅した面があり、『SQ』前後が戻りの一巡局面となる可能性に留意する必要があるとみられます。