相続税対策として非常に有効な贈与。現預金だけでなく上場株式でももちろん可能です。でも上場株式の場合はより有利に贈与できるタイミングがあるのです。

生前の贈与が相続税対策に有効な理由とは

 相続税を軽減させる対策の1つとして有名なのが、生前に財産をお子さんなどに贈与するというものです。

 まずご自身の財産を把握し、相続税の額や税率を試算し、それと贈与税の額を比較します。その結果、贈与税の税率の方が低ければ、生前に財産を贈与することで、贈与税と相続税をトータルした税額を軽減させることができます。

 贈与税の税率は、贈与する財産の金額が大きいと非常に高くなりますが、数百万円ほどであればそれほど高くありません。例えば親子間の贈与なら、500万円を贈与したときの税額は48万5,000円、税率でいえば10%以下です。

 特に、相続税の税率が30%とか50%になりそうな方であれば、毎年110万円の贈与税非課税枠の範囲内で贈与するよりも、多少贈与税を支払ってでも、お子さん1人当たり500万円くらいは贈与しておいた方が、かなりの相続税軽減につながります。

上場株式を贈与するときの評価額のルールは?

 贈与といえば、一般に思い浮かぶのが現金や預金の贈与です。でも、現預金だけでなく、不動産や有価証券など、財産全般が贈与の対象となります。もちろん、上場株式を贈与することもできます。

 上場株式を贈与する際のルールは、以下のようになっています。(出所:国税庁ホームページ)

 上場株式は、その株式が上場されている金融商品取引所が公表する課税時期(相続又は遺贈の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日)の最終価格によって評価します。

 ただし、課税時期の最終価格が、次の三つの価額のうち最も低い価額を超える場合は、その最も低い価額により評価します。

1.    課税時期の月の毎日の最終価格の平均額
2.    課税時期の月の前月の毎日の最終価格の平均額
3.    課税時期の月の前々月の毎日の最終価格の平均額

 少し分かりにくいので解説を付け加えます。

 原則は贈与をした日の株価の終値で金額を計算します。ただし、「贈与した月の毎日の終値の平均」「贈与した月の前月の毎日の終値の平均」「贈与した月の前々月の毎日の終値の平均」と比較して、最も低い価格で評価することができることになっています。

 例えば、5月29日に贈与して、株価が以下のような場合は、評価額は最も低い3月の平均値である1,300円となります。

・5月29日の終値:2,000円
・5月の平均値:1,700円
・4月の平均値:1,500円
・3月の平均値:1,300円

 つまり、上場株式を贈与する際は、2カ月前や1カ月前の株価を用いて評価することができるのです。