7:過去の運用成績で選ばない

「過去のパフォーマンスくらいは調べて投資しましょう」、あるいは「ファンドの『目利き』が重要です」といった言葉に釣られて、相対的に運用成績のいいアクティブ・ファンドを「事前に」選ぶことができると思わない方がいい。

 特に、過去の運用成績と将来の運用成績が無関係であることを強く意識すべきだ。

 投資家は、過去の運用成績を調べないことを後ろめたく思うかもしれないが、過去の成績を調べたからといって、将来の運用成績のいいファンドを選ぶ役に立たないことを忘れるべきではない。

 努力で改善できないことについて、努力するのは無駄である。運用の上手いアクティブ・ファンドを探すことができる、と思って投資信託を選ぶのはやめた方がいい。

 もちろん、それ以上に、上手いアクティブ・ファンドを選ぶことができるという前提のアドバイス及びアドバイザーを疑うべきだ。

 我が国公募の投資信託は現在5,000本以上あり、株式上場銘柄よりも数が多い。だが、上記の心得を理解・活用するなら、たぶん、投資してもいい投資信託は数十本、つまり、全体の2%未満の範囲に絞り込まれるはずだ。

 以上の話は、金融論的には、「明らかに劣るものは、劣っている」という当たり前の話に過ぎない。

【補足】
 2013年の原稿だが、投資信託の選び方について現在修正が必要だったり、新たに付け加えたりすることはない。投資信託の選び方について問われたのは、たぶん当時ネット証券4社が協同で行った「資産倍増」プロジェクトのイベントでだったと思う。投資信託の預かり資産を倍増させようという趣旨の集まりだったが、当時「倍増とはなんとケチな目標なのだろうか。手数料を半分にして、残高を4倍にするくらいの目標を立てたらいいのに」と思っていたことを告白しておく。個人型確定拠出年金の拡充やつみたてNISAの創設などの後押しや、インデックスファンドの手数料引き下げ競争などの好要因もあって、おおむねこの方向に向かっていることは喜ばしい。(2020年5月1日、山崎元)