原油先物価格が史上初のマイナスに!

 NY原油5月限の価格は、今週の月曜日にこれまでの歴史でありえない領域に踏み込み、記録的な急落を示し、史上初めてマイナスの領域で取引を終えた。安値はマイナス40ドル、終値はマイナス37ドルである。

 毎日2,000万バレルの供給過剰の中、売り手は在庫を持ちたくないし、買い手はタンカー以外に貯蔵する手段を持たない。先物の現引き・現渡しが絡む限月交代というテクニカル的な事情があるにせよ、原油のマイナス価格というのは常識では考えられない事態だ。

NY原油先物とS&P500指数の推移

出所:ゼロヘッジ

「原油先物価格はおそらく1ケタまで下がり、マイナス価格もあり得る」と予測していたのは、投資運用会社グッゲンハイム・インベストメンツのスコット・マイナードCIO(最高投資責任者)である。スコット・マイナードは、4月18日にブルームバーグの取材に答えて以下のように語った。

「S&P500種株価指数の上昇は持続不可能であり、下落局面に入った際には1200まで低下する可能性がある。数週間前にリバランスを行い、債券から株式に資金を移していま様子見している投資家は、恐らくまたリバランスを考えたほうが良いだろう。S&P500種はこの先1500や1600、または1200を付ける可能性がある。現在の米株式相場は流動性のみに支えられている。失業率が景気悪化以前の水準に戻るのには長い時間を要するだろう。人々の職場復帰を企業に奨励する、より長期的な計画を私がとても気に掛けているのはこのためだ。」
(4月18日 ブルームバーグ「S&P500種、1200まで下げる可能性-グッゲンハイムのマイナード氏」

S&P500(日足)200日ボリンジャーバンド

出所:石原順

「さすがにゼロ以下の価格はないだろう?」ということで、原油ETN(Exchange Traded Note/上場投資証券)などが値ごろ感からの大量の買いを集めていたことが、今回の原油大暴落という惨劇の引き金になった。ここでの教訓は、「Disaster(破壊)環境では、値頃感で売買してはいけない」ということである。原油価格は経済の体温計であり、株価の先行指標だ。我々はこれから株価の急落にも気が抜けない。

NY原油1限月つなぎ足(日足)

出所:石原順

NY原油先物第1限月つなぎ足とNYダウの推移

出所:石原順