NY原油、衝撃のマイナス価格
20日のニューヨーク原油先物市場で代表的な指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)の価格が史上初めてマイナス価格となりました。
5月物(期日4月21日)の終値が1バレル=▲37.63ドル(前週末比▲55.90ドル)と、売り手が買い手にお金を支払って原油を引き取ってもらう異例の事態になりました。需要の大幅な減少によって在庫が増え、その保管スペースが枯渇するという懸念から、ファンドなどが投げ売りしたとの話ですが、パニック的なプライスアクションとはいえ、原油先物価格がマイナスになるとは衝撃的な出来事です。
この異常事態は5月物だけで、20日の6月物の終値は20.43ドル(▲4.60ドル)、12月物は32.41ドル(▲1.41ドル)にとどまっています。今年の後半に原油需要が回復するとの見方や、産油国の更なる減産の期待があるためとのことですが、果たして5月物だけに見られた異常現象だったのでしょうか。
IEA(国際エネルギー機関)によると、「4-6月期の需要減は日量2,310万バレル」と予想しています。4月12日にOPEC(石油輸出国機構)プラスで決定した協調減産は日量970万バレルでした。この減産合意では供給過剰は解消されず、在庫は積み上がっていくことになります。
また、EIA(米エネルギー情報局)によると、4月第2週の米国の原油在庫は前週比約2,000万バレル増え、約5億バレルになったとのことです。米国の貯蔵能力は約6億5,000万バレルとされ、このままでは8週間で保管スペースがなくなることになるため、保管余力不足の不安は続きそうです。
このように原油の供給過剰、保管余力と在庫積み上げペースを見ていると、5月物だけの異常事態とみるのは早計かもしれません。
21日が最終取引日の5月物は、結局10.01ドルとプラスで終えました。前日の▲37.63ドルから47.64ドル反発しましたが、22日から期近となる6月物の21日終値は8.86ドル安の11.57ドルと下落は続いています。OPECはこのような事態を受け、5月10日のOPEC開催を調整し始めていますが、それまでは不安定な動きになりそうです。
低金利時代の経済の体温計は?
経済の体温計といわれている金利ですが、各国の中央銀行の政策金利がゼロ金利やマイナス金利、また、米長期金利も1%未満の低い金利で動いている状況の中では、経済の体温を表しているのは、ヒトやモノの動きによって需要が大きく左右される原油価格かもしれません。そうだとすると、20日の原油先物市場で起こったことは、この先の経済状況を示しているのかもしれません。
20日のNYダウは、原油マイナスを受けてエネルギー株を中心に売られ、592ドル安となりましたが、まだそこまで経済の先行きを読んだ動きを反映していないのかもしれません。
今後も非常に気になる原油の動きです。原油が反発するのか、長引く経済悪化を嫌気し、原油は続落し株が二番底を探りにいくのか注目していく必要があります。
原油が下がり続け、株が二番底を目指すシナリオとなれば、ドル/円は円高方向のシナリオとなりそうです。