株価指標を用いて企業分析する際の注意点

 最後に、私たち個人投資家が株価指標(PER:株価収益率やPBR:株価純資産倍率)を用いてこうした企業を分析する際の注意点を記しておきます。

 まず、減損により多額の損失が計上されると、当然ながら当期純利益は大きく目減りしますし、中には当期純損失となるケースもあります。しかし、減損による損失は、一時的・臨時的な損失であるとされるため、PERにより企業の割安度を分析する場合は、減損による影響は除いてPERを計算するとよいでしょう。

 次に、今回の措置により減損が見送られる企業で、実際は工場、ホテル、店舗等の稼働率低下などにより減損の兆候が生じている場合は、PBRでの分析に注意が必要です。

 減損による損失が表面化していないので、実態より1株当たり純資産が高く計上されることになります。その一方でプロ投資家は、実態を把握したうえで企業分析していますから、株価はその分目減りします。

 その結果、株価に比べて1株当たり純資産が見た目上大きくなり、PBRも低くなります。

 しかしこのPBRは、決算書では減損による損失計上を見送った一方、実態を表す株価の方は減損の影響を織り込んでいるという、ねじれ状態にあります。したがって、特に新型コロナウイルスの影響が大きい企業については、PBRが低くなっているからといって、即座に「割安だ」と飛びつかないようにしてください。

 もうすぐ3月決算企業の本決算が本格化します。2020年3月期の決算の結果、2021年3月期の業績の見通し、そしてそれらが発表されたことによる株価の反応を注視し、株式市場が新型コロナウイルスの影響をどれだけ織り込んでいるかを確かめていきましょう。