企業が保有する有価証券の減損は従来通りの予定

 企業が保有する他の会社の株式など有価証券についても減損の制度があります。例えば保有する上場株式の株価(時価)が取得価格から50%以下になり、将来の株価回復見込みも低い場合は、取得価格と時価の差額を減損処理し、損失を計上しなければなりません。

 今のところ、こちらの方は従来通りのルールが適用される見込みです。ただ、筆者個人的には、新型コロナウイルスの影響で業績が落ち込むことと、それにより株価が大きく下落することは同義であるため、ルールは統一した方が望ましいのではないかと思っております。

減損見送りによる株価への影響は

 減損ルールの柔軟化による、株価への影響はあるのでしょうか。

 まず、現時点で、工場の稼働がストップしていたり、宿泊客が激減していたり、店舗の来客が通常よりはるかに少ない、といった状態の企業の株価はすでに大きく下落しています。

 そのため、減損のルール柔軟化により損失計上が見送られたとしても、株価への影響はあまりないと思います。

 表面上は損失計上が見送られるので、自己資本比率の低下や1株当たり純資産の減少などによる企業の安全性へのマイナスの影響は緩和されます。しかし、プロの投資家であれば表面的な会計数値ではなく実態を把握して投資判断しているので、多少の株価の下支え効果がある、という程度ではないでしょうか。

 ただ、保有する有価証券の大幅な値下がりにより減損処理を行い、その結果純資産が大きく目減りするような場合、自己資本比率の低下や1株当たり純資産の減少を招き、企業の安全性が問題視される可能性があります。その結果、株価にもマイナスの影響が生じると考えられます。