東大生の頭脳は単純なテクニカル分析にハマらない

――みなさんの投資スタイルを教えてください。

西河 ぼくは株価には二つの側面があると思っています。それは「売買の流動性が高いことによりマーケットの評価がつきやすい」という側面と「経済的な実態」の側面。どちらの影響が強く出ている株価なのかをまず評価して、それぞれに合った投資の仕方があるのではないかと思っています。

市場と経済のつながりを話す西河さん

「流動性の高い銘柄」であれば、テクニカル分析を使い、「流動性の低い銘柄」は、企業価値の評価とかエンゲージメント(企業との対話)投資家がやっているような企業の実態に即した投資が適していると考えています。

 流動性の低い銘柄は、すぐに株価の上昇は望めないけれど、長期保有していればいずれ株価が再評価されて上がるのではないかと考えています。

山崎 流動性が高い銘柄は、たくさんの投資家に見られているということだから、企業の価値に対するミスプライスを見つけることは少し難しい。流動性の低い銘柄は企業の価値と株価と比べたときにミスプライスを見つけるチャンスがあるのではないかということですね。

 ただ、流動性がある銘柄に対してテクニカル分析が有効かというとちょっと……。長年いろいろな人がテクニカル分析の極意を見つけたと言っているけれど、テクニカル分析で大金持ちになった人はほとんどいません。

大塚 チャートだけを見て判断するのは、さすがに博打的になるので、他の指標を入れてみるのはどうですか。

ファンダメンタルズは将来にも役立つ、と山崎元

山崎 さすがに東大生の頭脳は単純なチャート分析にハマるほど幼稚ではなかったね。チャート分析は、プロの世界ではあまり相手にされていないけれど、素人には何か意味があるように見える。占いみたいにね。

 投資サークルで行っているファンダメンタルズを学ぶことは、株式投資で勝てるかどうかは別にして、ビジネスマンになるための勉強としては無駄ではないし、それを武器にマーケットと戦ってみるのは悪くないね。

大塚 例えば、ティックデータ(価格の時々刻々と変わる細かい値動きのデータ)のような取引データを入手して売り買いの強さなどを分析して、相関がちゃんと出るのなら、それを参考にすればいいのではないかと思っています。ティックデータからは、市場に関わる人の動きが分かると思うのですが……。

山崎 ティックデータみたいなものを全部集めてコンピューターで解析して……という取引は、多数の高速取引業者がやっていることなので、そこにはチャンスがないかも、という感じがする。それよりも、ゆっくりしたタイミングで取引するプレースタイルを身につけた方が個人の戦い方としては得策ではないかなあ。