雇用・キャリア形成にも波及

 さて、イベント中止による先々の売り上げ減少やスキル・ノウハウの消失、設備投資の抑制などの可能性を見てきましたが、労働力の面でも悪影響が出始めています。

 コロナショックによる業績悪化で内定取り消しという報道が出始めています。それ自体、労働投入量の減少などを通じたマクロ経済への下押し圧力がありますし、なにより当事者にとって不幸です。

 そうした社会人生活の第一歩だけではなく、既に会社で働いている若手社員にとっても望ましくない状況が生じているようです。大企業を中心に、新型コロナへの感染を抑制するため、在宅勤務・リモートワークが急速に導入されていますが、通勤がないので楽で良いという声がある一方、若年層の教育をどうすれば良いのかという声を聞くことが多くなっています。

 日本の古く規模が大きい企業は特にそうですが、キャリア形成やスキルアップは各自が自発的に行うというよりも、OJTが重視され、人事考課の項目に部下・後輩の指導・育成が含まれている会社もあります(プロパー社員率が高い銀行業に多いようです)。

 働き方の多様化それ自体は望ましいのですが、新型コロナ対応の急場しのぎとなったため、教育まで手が回っていないようです。結果のフィードバックはできても、プロセスのフィードバックができないと片手落ち。そして、企画や開発部署ではアイデアのフィードバックも重要です。

 欧米の大学ではわざわざ他学部の教授が同じカフェやラウンジを使うように建物や研究室の配置を考えているところもあるそうで、イノベーションは組み合わせから生まれることを意識しているのだと思います。

 在宅勤務で仕事が上手く回るのは中堅層。トップ層はアイデアを生み出すための刺激が足りませんし、若年層はそもそもプロセスのフィードバックの重要性に気づいていない人が多く、部下を持つ立場の方は苦慮されています。こうした課題は短期というよりは中長期にボディーブローのように効いてくる可能性があります。

 コロナショックの経済への悪影響は株価や企業収益の悪化といった短期的な影響だけではなく、中長期的な悪影響も懸念されます。課題は見えてきているので、政府対策の第3弾があるとすれば、短期だけではなく中長期にも目を向けた施策を期待したいところです。