ドル/円がクラッシュの背景に複合要因

 さて、今回の円高の背景は、何度も触れていますが、新型コロナウイルスの感染拡大によってヒト、モノ、カネが動かなくなり、世界景気悪化を嫌気した株安によって円高が進行しました。そこに、米長期金利の急低下と、さらに原油の急落が引き金となり、ドル/円がクラッシュしました。

 今後もこれらの要因は注視していく必要があります。特に、現時点では米国長期金利の動きの影響が大きいため、金利が上昇すると円安になり、再び金利が低下してくると円高が進むとみておいたほうがよさそうです。

 また、原油価格の下落は産油国の財政圧迫、米シェールガス企業の業績圧迫、世界的な物価の下落(金利低下要因)につながるため、原油価格動向や生産国の動きに注目していく必要があります。新型コロナウイルスによる景気悪化で原油需要は落ち込み、供給面ではOPECとロシアなどの非OPEC諸国との減産合意は難しく、原油価格の反発はしばらく期待できません。

 原油は過去の動きをみていると強気相場は短く、弱気相場は長いことから、現在の環境下ではさらに長引くかもしれません。

 今回の円高の説明コメントを聞いていると、リスク回避の円高ということが多く聞こえてきますが、世界景気悪化懸念から企業やファンドの資金化の動きとの見方もあります。これまでの金融緩和によって膨れ上がった過剰債務が急速な景気悪化によって債務を縮小しているという指摘です。長引けば資金ショートになる可能性もあるため、企業やファンド、個人はこれまでの債務の巻き戻しをこれから本格的に始める可能性があるかもしれません。

 株の下落幅からリーマン・ショックと比較されることが多いですが、リーマン・ショックは金融機関を中心とした信用不安であり、被害を受けた金融機関、ファンドや個人も欧米マーケット中心の出来事でした。しかし、今回は世界的に債務が膨張している中、世界的に景気が悪化してくることから被害はもっと大きくなるかもしれません。

 今回のような相場で怖いのは終わりの時期が見えず、従って底値のメドが立たないということです。各国政府が財政で支援策や景気対策を検討し始めていますが、中央銀行の金融政策も含め内容や規模が限られているため、まだまだ安心して相場を見ることができない状況が続きそうです。

 こういう場合は強弱両方の相場シナリオを備えてマーケットに柔軟に臨む必要があります。