日銀は為替介入ができない?

 政府・日銀にとって急激な円高は歓迎できない。しかし、市場介入は事実上封じられているのだ。

 市場介入しない理由として最も大きいのは対米関係だろう。トランプ米大統領は基本的にドル安論者。中国が人民元レートを不当に安く設定してきたせいで相対的にドル高となり、米国の輸出企業が不利な競争を強いられてきたとの見解を大統領就任前から貫いている。

 最近ではウイルス騒動による株価下落を見て、「アメリカの金利は高すぎる」と何度も発言してパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長に対して圧力をかけ、金利低下とそれによるドル安へ誘導して景気を浮揚しようと必死になっている。

 しかも、米国は不公正な貿易を狙う「為替操作国」の認定をちらつかせて中国に圧力をかけてきた経緯がある。ウイルス騒動後も米国と中国の世界経済をめぐる対立が続くことも考えれば、今ここで米国と協調路線を取る日本が市場介入し、中国に反論の口実を与えるわけにはいかない。

 中国を抜きにしても、日本が円売り・ドル買い介入をすればドル安をよしとする米国の経済政策と真正面からぶつかることになる。政府・日銀は1985年のプラザ合意以降、米国の金融・為替政策に逆行する行動を取ったことはなく、今後も東日本大震災クラスの巨大災害でもない限り、市場介入には手を出さないとみられる。