2.1998年の「ロシア危機~LTCM危機」と似ている

 今回の株価調整が、1998年の「ロシア通貨危機とLTCM経営危機」発生時と似ているとの指摘があります。

 当時は、原油相場の下落基調を主因にロシアのデフォルト(国債の債務不履行)リスクが8月に高まり、ロシア国債に多額の投資をしていた大手ヘッジファンドLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)が10月に経営危機に直面。ロシア危機からLTCM危機に至るまで、市場は「金融危機が世界に伝播するリスク」を怖れ株価は急落しました。

 ダウ平均は1998年7月高値から約19.3%下落。ドル安・円高が進行したことで日経平均は同年3月高値から25.4%下落しました。株式売り・債券買いが進んだ結果、米国市場の長期金利は政策金利(FF金利誘導目標上限)を大きく下回り「逆イールド」(長短金利逆転)がみられました(図表2)。市場がFRBの金融緩和を催促していた状況がわかります。

図表2:ロシア危機からLTCM危機の米国市場を参考にする

出所: Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(1998/1/1~1999/12/31)

 当時、グリーンスパン議長が率いていたFRBは、9月末から3度にわたる断続的な利下げを実施して市場に流動性を供給。ロシアとLTCMの危機を発端とする金融危機の連鎖を回避する利下げは「保険的利下げ」や「予防的利下げ」と呼ばれました。

 結果として、危機が沈静化した後に米ダウ平均、米長期金利、日経平均が翌年(1999年)に向け回復基調をたどった経緯がわかります(図表2)。FRBが機動的に金融緩和を実施したことが、その後の株価、景況感、長期金利の底入れを導いたとされています。

 市場実績で振り返ると、金融危機の収束と景気回復期待の復活で、ダウ平均は1998年8月の底値から1999年末まで約52%上昇しました。もちろん当時と現在が全く同じ環境とは言えません。ただ、市場参加者は「過去の市場実績との類似点を教訓とする傾向」があり注目したいと思います。