リーマン・ショックはなぜ起こった?ショックを引き起こしたつの要因

 リーマン・ショックは、2つの要因が重なって起こった「複合ショック」です。1つは、リーマン・ブラザーズの破綻に象徴される、欧米の金融危機です。もう1つの要因は、世界的なインフレ高進です。インフレが世界の消費を押しつぶし、一時的に「需要消滅」を生じました。

(1)金融危機:北米のサブプライムローン危機が世界に拡散
リーマン・ショックは、北米の住宅バブル崩壊が引き起こした「金融危機」として知られています。北米のサブプライムローン(低所得者向け住宅ローン)が不良債権化し、米国の大手金融機関の財務が悪化しました。この危機は、米国に留まらず、世界に拡散しました。金融テクノロジーの進歩で、北米のサブプライムローンは証券化され、幅広く、世界中の金融機関に販売されていたからです。特に、欧州の金融機関が甚大な被害を受けました。

(2)需要消滅:インフレが世界的に高進し、消費を押しつぶした
リーマン・ショック直前は、資源バブルのピークで、世界的にインフレが高進していました。インフレが世界の消費を押しつぶし、一時的に世界から需要が消失した状況を生じました。新興国では軒並みインフレ率(消費者物価指数の上昇率)が10%を超えており、ハイパーインフレが世界経済のリスクと言われていました。中国ではインフレ率が一時8.5%まで上昇しました。

 先進国でもインフレ高進が懸念されていました。低インフレ国の日本でも、一時的にインフレ率が2%に達し、消費を抑制しました。

 リーマン・ショックが起こると、需要消滅が世界中に連鎖しました。製造業で一時的に生産が完全にストップしました。製造業の生産効率引き上げのために、世界的なサプライ・チェーン・マネジメントが拡散していたからです。最終需要の減少がまたたく間に世界中の製造業に伝播し、世界中の製造業が「瞬間凍結」しました。

リーマン・ショックは半年で終息

「金融危機」と「需要消滅」が同時に起こり、サプライチェーンを通じて、世界中の製造業が「瞬間凍結」したのが、リーマン・ショックでした。このような世界不況は、かつて経験したことがなかったので、「100年に1度の世界不況」と言われました。多くの市場関係者が、深刻な不況が長期化するというイメージを持ちました。

 ところが、瞬間的な落ち込みは激しかったものの、不況は約半年で終息しました。リーマン・ショックが起こった翌年の2009年1-3月が世界不況の底でした。2009年4月から、世界景気は急速に立ち直りました。