予想以上に悪化した日本のGDP

 今週2月17日に発表された日本の2019年10-12月期GDP(国内総生産)は、実質年率▲6.3%と、予想(▲3.5%)を大きく下回り、5四半期ぶりのマイナスとなりました。

 昨年10月の消費増税や、台風の影響で個人消費が落ち込み(▲2.9%)、前回消費増税後の2014年4-6月期(▲7.4%)以来、マイナス幅は5年半ぶりの大きさとなりました。また、企業の設備投資も景気の足を引っ張り、米中貿易摩擦による海外経済の減速懸念が響き、設備投資は▲3.7%と3四半期ぶりにマイナスとなりました。

 輸出も▲0.1%と2四半期連続で減少となりましたが、輸入の減少幅が大きかったことから(▲2.6%)、外需の寄与度としては0.5%と3期ぶりにプラス。しかし、手放しでは喜べません。輸入が大きく減少ということは、国内の需要が落ち込んでいることを反映している可能性が大きいからです。

 この個人消費や設備投資の落ち込み、さらに輸出も落ち込んだという悪い内容のGDPは、消費増税の影響と米中貿易摩擦による海外経済の減速が足かせとなった結果です。現在の新型肺炎による中国経済悪化の影響はまだ加味されていません。

 新型肺炎の影響は、中国経済減速による輸出の減少、サプライチェーンへの悪影響による生産の停滞、中国からの訪日観光客減少による国内消費の減少で、日本経済は下押しされる可能性が高まります。日本の2019年中国向け輸出額は全体の2割を占め、米国に次いで高い割合です。また、外国人観光客のうち約3割を中国人が占めています。新型肺炎の感染拡大が長引けば長引くほど、最悪の場合、2期連続のマイナス成長も想定されます。イタリアやドイツのリセッション(景気後退)が話題になっていましたが、もはや人ごとではなくなってきました。今のところ、1-3月期のGDP予想として0%以上との見通しが多いようですが、日本のリセッション・シナリオも想定する必要が出てきました。

 今後は、日本のGDP悪化をきっかけに、欧米諸国が自国への景気影響を警戒するかどうかに、注目したいと思います。日本は地理的にも中国に近く経済関係も深く、低成長、低物価の国であるため、新型肺炎による打撃が最も大きくなるとみられますが、対岸の火事と、自国影響を過小評価していた欧米諸国も、日本への打撃がさらに大きくなれば、警戒ムードに転ずる可能性があるからです。