チェックポイント1:高配当株の配当推移
配当額だけを見ると比較的安定
下表のように、4年間、ほとんどの銘柄の配当は横ばいか、上昇していますが、日産自動車は決算が大きく悪化した影響で2019年度は配当額が大きく下がっています。業績が悪化すれば当然、配当額も下がることは予想できますが、配当額だけを見て、業績が安定していると考えるのは早計です。
配当額の推移だけでなく、「1株当たりの配当 < 1株当たりの利益(EPS)」となっていなければ、過去の利益を取り崩して配当をしていることになるので、要注意です。
代表的な銘柄の1株当たり配当額推移
銘柄 | コード | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 |
---|---|---|---|---|---|
JT | 2914 | 130円 | 140円 | 150円 | 157円 |
武田薬品 | 4502 | 180円 | 180円 | 180円 | 180円 |
日産自動車 | 7201 | 48円 | 53円 | 57円 | 19円 |
みずほFG | 8411 | 7.5円 | 7.5円 | 7.5円 | 7.5円 |
注:1株当たりの年間配当額。2019年度は予想を含み、2020年2月10日時点の中央値で計算 出所:筆者作成 |
チェックポイント2:株価の推移
株価推移の比較で、高配当銘柄の落ち込みが浮き彫りに
比較的、配当が安定しているなら、株価はどうでしょうか。
高配当銘柄への投資で配当収入を期待している方は、株価も大きくは値下がりしないだろうという前提で投資していると思われます。そこで2015年1月時点の日経平均株価と各銘柄の株価を100として、約5年間の推移を比較してみます。
日経平均株価と各銘柄の株価推移
配当を除いた株価の推移ですが、どの銘柄も2017年ごろは近い水準で推移していることから、配当の多い銘柄が優位となっています。しかし、2020年1月時点では日経平均株価と他の銘柄に大きく差が開いています。高配当株式ETFでも20%程度、個別銘柄では40~80%程度も差が開いており、配当ではその差を埋めることはできないことが分かります。受け取っている配当の差額を考慮しても日経平均株価の推移には届いていません。
このことから、高配当株式への投資をするときには、二つのことに注意することが重要となります。
(1)業績が好調もしくは安定していて、配当金が当期の利益内であること
(2)個別銘柄では、配当金だけでなく株価の変動に注意が必要であること
特に高配当銘柄を選ぶ方の中には、配当ばかり気にして、株価の変動の大きさをあまり考えずに投資をしてしまう方が散見されます。優良株や高配当株と言われる有名な会社だからといって、安易に大きな金額を投資することは、シニア世代にとって致命的な失敗につながりかねません。