3.2020年1-3月期から大手電子部品メーカーの業績回復ないし再成長を予想

 グラフ7は楽天証券予想の5Gスマホ全世界出荷台数と4G以下のスマホ出荷台数です。5Gスマホ出荷台数は、2019年の2,000万台から2020年2.5億台、2021年4.5億台、2022年7.5億台、2023年9.5億台と成長し、これが世界のスマホ出荷台数を2023年16.5億台に押し上げると予想されます(グラフ6、2019年~2022年まで年率5%成長と予想)。

 4Gは5Gに比べて、チップ積層セラミックコンデンサ(MLCC)の搭載個数が増えると予想されます。表2は4Gまでの電子部品搭載個数の変化を見たものですが、5G時代になっても重要電子部品の搭載個数増加は続くと予想されます。

 また、スマホ内部の収容面積を確保するために、MLCCでは従来最も小さかった0402(長さ0.4mm、幅0.2mm)よりもさらに小型の0201が採用される可能性があります(0201は0402よりも価格が高い)。高周波対応の樹脂多層基板「メトロサーク」の搭載枚数が増加することも考えられます。高周波、特にミリ波は送信時の電力消費が大きいため、電池の高性能化、大型化が進むと予想されます。アンテナ系の強化も進むと予想されます。

 このため、5Gスマホの出荷増加は電子部品大手にとって再成長のチャンスとなると思われます。

 ただし、高級電子部品を数多く使うことはコスト高につながります。コスト低減のためには、大量生産によるコストダウン、少数の大手電子部品メーカーに絞って調達するなどが必要になると思われます。シェアを多く獲得したスマホメーカーが有利になると思われます。

 5Gスマホをけん引役としたスマホ市場の再成長が実現すれば、電子部品大手の村田製作所、TDK、アルプスアルパイン、イメージセンサー最大手のソニーは、2020年1-3月期から業績が上向く、あるいは会社予想に対して上方修正になると思われます。各社とも、2020年1-3月期のスマホ出荷台数を控えめに想定しているもようなので、2020年3月期の会社予想業績は上方修正の可能性があります。そして、続く2021年3月期は好業績が予想されます。

 さらに、5Gスマホが急速に伸び、それによって世界のスマホ市場が再成長に向かうとなれば、電子部品大手の好業績は2023年3月期または2024年3月期まで続く可能性があります。

 このような見方に従って、今回は、村田製作所とTDKを取り上げます。

表2 スマートフォンに搭載される電子部品の個数

出所:村田製作所資料より楽天証券作成
注:ハイエンドは、マルチキャリア、LTE-Advances(キャリアアグリゲーション)、ミッドレンジはマルチキャリア、LTE、ローエンドはシングルキャリア、LTE。

グラフ6 スマートフォンの世界出荷台数

単位:100万台
出所:2014~2018年はiDCプレスリリース、2019年推定~2023年予想は楽天証券

グラフ7 5Gスマートフォンの世界出荷台数予想

単位:100万台
出所:2018年はiDCプレスリリースによる。2019年以降は楽天証券予想

表3 スマートフォンのメーカー別出荷台数と世界シェア

単位:100万台
出所:IT Media Mobile(元出所はIDC)、IDC Japanプレスリリースより楽天証券作成。

表4 主なスマートフォン用電子部品の市場シェアと概要

出所:会社資料とヒアリングより楽天証券作成。
注:Samsung Electro-Mechanicsは韓国サムスン電子系の電子部品会社。