「プロ」は株主優待が嫌い?
個人に人気で採用する企業が増加している株主優待制度ですが、東京証券取引所「市場構造の在り方等に関する市場関係者からのご意見の概要(2019年5月更新版)」を見ると、市場関係者の評判は良くありません。
○ 株主優待の廃止を求める(コア事業に関係ないものをやめ、個人投資家だけではなく、機関投資家への便益を提供すべき)
○ 現在のように何ら対策なく、株価維持のために金券類を株主優待とすることを放置すべきではない
○ 株主数基準があるために、上場会社は、株主優待などの個人投資家集めに多くのリソースを割いている状況であり、株主数基準については見直しが必要ではないか
と厳しい指摘がされています。
株主優待は海外に郵送されないので、外国人投資家には特に不人気です。そもそも、丸木強、松橋理「近時の株主優待制度の変化と問題」(旬刊商事法務No.2211収録)によると、米国・英国で株主優待制度を採用している企業はそれぞれ8社、22社と極めて少なく、それも自社製品・サービスの提供を行う企業のみだそうです。
法律論から言っても、自社製品・サービスの宣伝になるならともかく、金券等によるタコ配を正当化するのは難しいですし、配当原資があったとしても、換金が容易な金券等が株式数に比例せずに提供されるのであれば、株主平等の原則に反している可能性もあります。株主優待が急速に何でもありのガラパゴス化したため、法整備が追いついていないように見えます。
資本市場制度改革の一環として、東京証券取引所にプライム市場を創設するための議論が行われており、市場のグローバル化の流れの中で、いつまで自社製品・サービスと関係ない金券やカタログギフトなどの株主優待が続けられるか、金融庁・金融審議会や東京証券取引所の動向が気になります。