利益がないのに、優待を出して大丈夫?

 安定株主の確保は、持ち合い株式(政策保有株式)解消の流れの中で、新たな株主を探すニーズが高まっていることと関連しています。経営者にとって、株を持ち続けてくれる株主はありがたい存在。欲を言えば、物を言わない株主が増えれば、こんなに楽なことはありません。

 安定株主が増えることで敵対的買収が減り、目先の利益にとらわれず、長期的な視点に立って経営ができる可能性はあるものの、株主が経営を監視する機能が薄れ、放漫経営を招くリスクもあります。

 また、大口の安定株主さえいれば問題ないかというと、事はそう単純ではありません。上場基準に株主数が規定されているため、株主数を増加・維持する必要があります。具体的には、東証二部上場には800人以上の株主が必要で、東証一部への上場・指定替えには2,200人以上の株主が必要と定められています。

 また、せっかく東証一部に上場できても、株主数が2,000人未満になると、東証二部に「格下げ」されてしまいますし、400人未満になると上場廃止になってしまいます(それぞれ猶予期間は1年)。

 株主へのサービスのように感じてしまう株主優待制度ですが、必死の上場維持政策として株主優待制度を採用している企業がある可能性も否定できません。あくまで一般論ですが、配当する利益が出ていないのに、株主優待で金券等をばらまいている企業は、事実上、タコ足配当(いわゆるタコ配)をしているのと同じなので、注視した方が良いでしょう。