2020年3月期企業を対象とした業績進捗率ランキング

 今回は、指標としても注目度の高い業績進捗率に着目して、ランキングを作成し、その中からいくつかの企業をピックアップして紹介します。

■業績進捗率ランキング(2020年3月期企業)

順位 コード 銘柄名 業績進捗率 最低投資額 (12/19) 一年間の値上がり率 (1/4~12/19)
1 7731 ニコン 87.5% 142,900 ▲ 10.41%
2 5938 LIXILグループ 84.4% 198,800 53.51%
3 9533 東邦ガス 82.6% 459,500 ▲ 2.85%
4 9506 東北電力 81.6% 112,200 ▲ 24.04%
5 4534 持田製薬 80.5% 458,000 0.32%
6 9010 富士急行 78.1% 428,000 32.30%
7 6395 タダノ 75.7% 100,200 ▲ 0.10%
8 9783 ベネッセHD 73.2% 289,800 5.46%
9 6857 アドバンテスト 73.1% 598,000 177.88%
10 3254 プレサンス 72.8% 115,500 ▲ 8.77%
出所:フィスコ作成
最低投資額の単位:円

第8位は教育業界をけん引する大手

ベネッセHD(9783)株価2,898円(12月19日終値)

「進研ゼミ」でお馴染みの教育大手企業です。11月5日に発表された2020年3月期上半期決算によれば、営業利益は前年同期比68.8%増と大きく2ケタ増益を達成しました。

 業績進捗率も73.2%と高い水準です。国内での値上げ効果や販促見直しなどによるコスト効率化が業績をけん引しました。同社は、事業基盤の幅広さに基づく堅固なビジネスモデルが特徴です。

 主力の教育事業は小中高生といった若年層を対象としたものだけではありません。大学生の就職支援や社会人スキル養成支援、さらには企業の採用支援までを対象とした「Benesse i-Career」を手掛けていたり、IT、プログラミング、マーケティングといった幅広いビジネススキルを対象にした世界最大級のオンライン学習プラットフォーム「Udemy」とも提携したりと、あらゆる年代を対象とした教育事業を手掛けています。

 また、あまり知られていないことですが、同社は教育事業だけではなく、介護事業や保育・学童事業なども手掛けており、国内教育事業に次ぐ事業柱となっています。つまり、同社は幼少期の子供からお年寄りまで、ほぼ全ての年代をカバーした事業基盤を有しているのです。収益基盤もしっかりしており、業績も安定しています。

第3位は私たちの日常生活を支えている身近なインフラ企業

東邦ガス(9533)株価4,595円(12月19日終値)

 売り上げ規模がガス業界で第3位を占める大手都市ガス会社です。10月29日に発表した2020年3月期上半期決算では、営業利益が前年同期比4.3倍の181.74億円と大幅増益を達成しています。

 第1四半期の同2.2倍よりもさらに増益率を拡大させた形となり、事業の好調さがストレートに伝わってくる決算内容といえます。結果、上半期時点での業績進捗率は82.6%と節目の50.0%を大きく上回る順調な折り返しとなりました。同社は燃料調達費の上昇分を利用者料金に反映する仕組みを採用しています。

 そのため、燃料費上昇分のガス料金への価格転嫁がスムーズに進んだようで、これが都市ガス(主原料:天然ガス)事業の堅調さに寄与しました。LPガス(主原料:液化石油ガス、Liquefied Petroleum Gas)事業では、後継者不足による経営難の小規模事業者の業務を引き継ぐことで営業基盤を広げ、販売量を増やすことに成功しました。

 電気事業でも、契約件数が上半期時点で前年同期比89.7%増と大きく伸びています。今後の原油価格や為替レートの動向によっては業績への影響が考えられますが、前半戦が終わった時点での進捗率が80%を超えていることから、通期の会社計画を上振れて着地する可能性は十分にあると考えられます。

第1位は、世界トップクラスの光学機器メーカー

ニコン(7731)株価1,429円(12月19日終値)

 第1位となったのは、一眼レフカメラでお馴染み、カメラ愛好者の間でも長年人気のニコンです。業績進捗率は87.5%と非常に高い数値となっています。ただ、先に種明かしをすると、これは大幅な下方修正をした後の数値に対する進捗率なので、事業が好調ゆえの進捗率の高さではありません。

 11月7日に発表された上半期決算では、営業利益は前年同期比42.9%減の175.04億円と2ケタ減益の着地となりました。また、併せて通期の営業利益予想を520.00億円から200.00億円へと61.5%も引き下げました。先ほどの高い業績進捗率も、下方修正前の計画値でみれば33.7%と低い水準にとどまります。

 全体の売上高の4割以上を占める映像事業がスマートフォンの普及などで縮小傾向にあり、SNS用途で人気化したミラーレスカメラの分野でも、キャノンやソニーといった競合他社に対して出遅れたことなどが業績に大きく響きました。

 ただ、同社は、半導体用露光装置などを対象とした精機事業、顕微鏡や網膜画像診断機器などを手掛けるヘルスケア事業も展開しています。また、2015年度からは3年間にわたって各事業において選択と集中による収益力の向上、コストカットといった構造改革を実施した結果、収益力が大きく改善してきています。

 ヘルスケア事業はまだ収益柱と言えるほどには至っていませんが、4割近くを占める精機事業は、「AI(人工知能)」や「IoT(インターネット・オブ・シングス)」、「5G」、「クラウド」、「VR(ヴァーチャル・リアリティ)」といった、これからの社会を形成していくトレンドキーワードの土台である半導体に関する分野であることから成長性が見込めます。

 2021年度までに、生産自動化などのニーズにより市場規模の拡大が見込まれる工作機械の分野を新たな収益の柱に据えることを中期経営計画のなかでも宣言していることから、時間はかかれども、業績の改善余地はまだまだ十分にあると考えられます。