おひとりさまは老後に2,000万円どころではない

 今年の話題となった「老後に2,000万円」は、夫婦のモデルで不足する5万円台の不足額を人生100年時代で想定したものでした。

 モデル上、おひとりさまは生活費16.2万円に対し、15.6万円の年金があるように思います。しかし、これは「年金以外に余裕がないから年金の範囲でやりくりしている」と考えたほうがいいでしょう。

 家計調査年報では、月3.8万円ほど取り崩している実態が明らかになっています(年金額が少ない人、寡婦の年金生活者なども含まれるため)。この数字も、年金生活夫婦の月4.2万円の取り崩し額に近いものとなっていて、夫婦とおひとりさまにはほとんど差がないのです。

 仮に「月3.8万円不足」×「人生100年時代なので35年の老後」だと仮定すれば「老後に1,600万円」です。

 そして、多くの「正社員おひとりさま」が「もっと豊かな暮らしをしたい!」と希望するのであればそれ以上の上積みは欠かせません。仮に「月4万円の生活費を上乗せ」するなら、「プラス老後に1,700万円(合計で3,300万円)」になります。

 また、介護や家事などを誰かに頼む場合も、おひとりさまは自腹で負担することを思えばお金の備えは毎月の不足額を埋めればいいというわけではありません。実際にはどれくらいかかるかは分かりませんから、「プラス老後に500万~1,000万円」と余裕を見込めば、「合計額は3,800万~4,300万円」と大きくふくらんでいきます。

 この金額になると会社から退職金をもらえばなんとかなる、というわけにはいきません。むしろ計画的な備えを現役時代から行い、自分の老後の経済的基盤を確立させる意識を持つ必要があるわけです。

 おひとりさまである以上は、自分の老後の豊かさも自分が支えるのだという覚悟を持って、老後のための貯金や投資を行うべきです。

 そのためには、目の前の消費を少し控えることも必要になるでしょう。「今使う1万円のガマン」は「老後に自分が使う1万円+運用益」として返ってくることになるからです。