過去2年の原油先物の動き振り返り
来年、世界景気が回復に向かえば、原油価格の緩やかな上昇が続くと予想しています。ここで、簡単に過去2年の原油先物の動きを振り返ります。
WTI原油先物(期近)の動き:2018年12月末~2019年12月11日
<1>から<5>までの動きを解説します。
<1>2018年1~9月:上昇トレンド
世界景気が好調であったこと、OPEC諸国の減産が続いていたことから、2018年10月まで原油価格の上昇トレンドが続きました。2018年5月8日、トランプ米大統領が、イラン核合意から離脱し、イランへの経済制裁を再開すると表明したことが、原油先物がさらに上昇する原動力となりました。
米国は、11月までにイランからの原油輸入を止めるように一方的に宣言し、イランと取引する企業に制裁を課すことを示唆したため、イラン原油の供給減少懸念が強まりました。
<2>2018年10~12月:急落
中国景気の減速が鮮明となり、需要が鈍化する懸念から原油価格は下げ始めました。さらに、11月になってから、米国が、イラン産原油禁輸の「適用除外」に、日本を含む8カ国・地域を指定したことが下落に拍車をかけました。米シェールオイルの増産が続き、米国の石油在庫が増加してきたことも、売り材料となりました。
イラン産原油禁輸の適用除外措置は、2019年5月まで続けられました。2019年6月以降、禁輸が発動され、日本などがイランからの原油輸入を停止したため、イラン産原油の生産量は大きく落ち込んでいます。
<3>2019年1~4月:反発
米中通商交渉が近く合意に達する期待が広がり、貿易戦争で減速している世界景気も回復に向かうとの期待が出ました。それを受け、原油も買い戻されました。
<4>2019年5~6月12日:反落
再び米中貿易戦争がエスカレートし、世界景気が悪化する不安が強まり、原油価格は反落しました。米シェールオイルの増産が続いていることも、売り材料となりました。
<5>2019年6月13日~12月11日:底打ち
米中通商交渉で「部分合意」が近いとの思惑、来年にかけて世界景気がゆるやかに持ち直すとの期待を背景に、原油価格が底打ちしました。
6月13日と9月16日に中東の地政学リスクが高まったと判断される事件が起こり、一時的に原油が急騰しました。6月13日、中東ホルムズ海峡で日本の海運会社が運航する1隻を含む2隻のタンカーが何者かに攻撃を受けて炎上しました。ホルムズ海峡は、世界の原油輸出量の約35%が通過する交通の要衝です。原油供給が不安定化する不安から、一時、ニューヨークのWTI原油先物が急騰しました。ところが、その後、事態は沈静化し、原油価格は反落しました。
9月16日、サウジの石油施設が無人機の攻撃を受け、産油能力の半分が失われたと発表があると、再び、原油先物は急騰しました。ただし、サウジの産油能力は短期的に完全復旧したため、9月の上昇は一時的でした。