資源事業の落ち込みを非資源事業の拡大で補って、最高益に近い利益を計上
日本の総合商社大手5社は、非資源事業を拡大することで、資源事業の落ち込みをカバーし、最高益を更新、あるいは最高益に近い利益を稼いでいます。
大手総合商社5社の連結純利益:2019年3月期実績と2020年3月期会社予想
2020年3月期は、資源価格の下落や世界景気の減速によって、総合商社の収益はやや停滞します。ただ、原油など資源価格は2019年後半に入って、底入れしつつあります。私は、来年世界景気が緩やかに回復すると予想していますが、それを織り込む動きと見ています。資源価格が底入れすれば、来期には資源の利益も少し持ち直すかもしれません。
ただし、原油だけの上昇では、大手総合商社の資源事業利益を拡大させる効果は限定的です。LNG、銅、鉄鉱石、石炭などの資源価格全般が上昇しない限り、メリットは大きくありません。世界的に資源がやや供給過剰になる中で、資源が全面的に上がることは期待できません。
それでも、日本の総合商社株の投資価値が高いと判断しているのは、非資源事業を拡大することで、資源価格変動が収益全体に与える影響を緩和させつつあるからです。
私は、資源ビジネスにほぼ特化しているピュアな資源株は、収益が不安定なので、評価しません。具体的には、国際石油開発帝石(1605)、石油資源開発(1662)には、投資したいと思いません。
資源ビジネスで稼ぎながら、非資源ビジネスの収益を伸ばしてきている大手総合商社に積極的に投資したいと思います。
大手商社5社はいずれも中長期的に投資価値が高いと考えていますが、伊藤忠商事は今年の株価上昇率が高く、やや割安度が低下しているので、現時点での投資優先順位は低いと考えています。
1つ注意点があります。商社ばかりに集中投資すべきではありません。「同じバスケットにすべての卵を入れるな」という投資格言があります。単一のリスクを取りすぎないよう、分散投資せよという意味です。
総合商社の投資判断は以上です。ここから先、ご参考までに、原油市場のこれまでの動きを解説します。