日本は世界の中でも圧倒的に高齢社会であり、その後を日本と同様に工業生産力モデルを志向した韓国、中国が追っている。日本はジェロントロジー(高齢化社会工学=高齢者を生かし切る社会システムの制度設計)の確立が不可欠だが危機感は薄く、多くの日本人が“そこそこ日本はうまくいっているんじゃないかシンドローム”にとらわれていると、寺島実郎氏は指摘する。経済力は弱まる一方で、世界の中で日本の存在は「埋没」している。日本が再び光り輝くためには何をすればいいのか。
2019年11月9日開催の楽天証券ETFカンファレンスで「世界の変調と日本の進路」と題した寺島実郎氏の講演録を2回にわたって公開する。
後編ではアジアダイナミズムをテーマに、日本の現在の実力と成長へのヒントを提示する。
すでに埋没している?日本の経済力
私はこれまで、海外で開催された多くの会合に出席してきました。先日のシンガポールの会合では、世界を揺るがす構造変化の中で、日本が世界からどのように見られているかを改めて意識させられました。
シンガポールの会合で会った経営者や政治家たちは、外交辞令として「日本に期待している」と口にしますが、腹の中では「日本は終わった」と見なしていることを、ひしひしと感じました。
平成が始まる前年の1988年と、実質的に平成が終わった2018年の世界GDP(国内総生産)のシェアの推移を比較すると「日本の埋没」がはっきり理解できます。GDPは付加価値の総和、つまり我々が日々知恵を出し、額に汗して積み立てた産業・経済活動の総和です。
1988年の日本GDPが世界GDPに占めるシェアは16%でした。アジア(日本を除くASEANや中国、インドなど)は6%で、日本の3分の1です。平成が始まる前の日本は、アジアではダントツの経済国家だったのです。
ところが、2018年のシェアは日本6%、アジア23%と逆転。「日本の埋没」が決して誇張ではないことが数字に表れているのです。21世紀が始まる2000年の日本のシェアは14%だったので、「日本の埋没」感は、とりわけこの5~6年で急速に強まったことが分かります。