日本の人口は2053年には1億人を割り、65歳以上の高齢者の割合が38%に達すると予測されている。しかし、日本が抱える問題は人口の減少と高齢社会の進行だけではない。世界はもはや日本をアジアのリーダーとは見ておらず、日本のプレゼンスは大きく後退している。日本が成熟したリーダーとしてアジアで輝くためには、何をすべきなのか。
2019年11月9日開催の楽天証券ETFカンファレンスで「世界の変調と日本の進路」と題した寺島実郎氏の講演録を2回にわたって公開する。
前編ではデジタルトランスフォーメーションをテーマに、日本の進むべき道と個人投資家へのアドバイスを紹介する。
GAFAとBATがプラットフォーマーとして巨大データを支配
これからの日本の進む道を示すキーワードの一つは、デジタルトランスフォーメーションです。デジタルトランスフォーメーションとは「IT(情報技術)の浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念です。携帯電話・スマートフォンの普及数は人口の1.3倍を超えていて、我々は今さら指摘するまでもなく、ネットワーク情報技術革命に身を委ねながら生きています。
ネットワーク情報技術革命をけん引しているのは、GAFA+M(Google、Apple、Facebook、Amazon+Microsoft)の米国IT5社です。その株式時価総額は4.3兆ドル(約460兆円)に達し、日本のGDP(国内総生産)約5兆ドルに迫る勢いです。
一方、日本企業の株式時価総額(東証1部市場)トップはトヨタ自動車の23.5兆円。Appleの時価総額は1兆ドル(約106兆円)を超えているので、日本を代表する巨大企業であっても、マーケットではAppleの4分の1の評価しかされていないということです。
そして、米国のGAFAに対抗するのが、中国のIT3社BAT(Baidu、Alibaba、Tencent。*1)。株式時価総額は1兆ドル(約93兆円)に迫ります(時価総額はいずれも9月末時点)。
*1:HUAWEIは非上場のため入らず
10年前、西海岸に留学していた中国人が持ち帰った小さなプロジェクトが、IT革命の波に乗ってあっという間に巨大化したのです。米国5社、中国3社は、データを支配するものがすべてを支配する「データリズム」のプラットフォーマーズとして世界に君臨しています。