毎週金曜日夕方掲載

本レポートに掲載した銘柄:アドバンテスト(6857)東京エレクトロン(8035)レーザーテック(6920)SCREENホールディングス(7735)ディスコ(6146)

1.世界半導体出荷金額は、回復から再成長への動きが明らかになってきた

 今回の特集は半導体製造装置です。半導体市場の大底入れ、回復から、再成長へ向けた動きを概観します。また、レーザーテック、SCREENホールディングスの決算レポートを掲載します。

 まず、いつものように、世界半導体出荷金額の動きを見ていきます。

 2019年9月の世界半導体出荷金額(単月)は383億7,200万ドル(前年比14.4%減、前月比7.4%増)となりました。前年比のマイナス幅は出荷金額が大底を付けた2019年4月に17.9%減と最大になり、その後緩やかに縮小しています。前月比は、大底だった2019年4月以降、5月から9月までの間、7月を除いて全ての月でプラスになりました。

 この動きをより長期で見たものがグラフ1です。ここでは、世界半導体出荷金額(3カ月移動平均)の長期トレンドを見ます。前回のブームは2016年4月に底打ちし、2018年10月にピークを付けました。スマートフォンとデータセンター向け半導体の伸びによる過去最大のブームとなりました。今回のブームについて考えると、世界の半導体市場は2019年4月に底打ちし、現在回復から再成長の局面へ移っているところと思われます。

表1 世界半導体出荷金額(単月)

単位:100万ドル、%
出所:WSTSより楽天証券作成。

グラフ1 世界半導体出荷金額(3カ月移動平均)

単位:1,000ドル
注:2015年3月から「アジア太平洋・その他」から「中国」を分離
出所:SIA(米国半導体工業会)より楽天証券作成)

2.NAND市況は底入れから緩やかな上昇へ。DRAM市況は底入れを窺う展開か。

 NAND型フラッシュメモリメモリの大口価格は、今年8月下旬に小幅上昇した後、少しずつ上昇に向かう展開となっています。市況は今年夏に大底を入れたと思われます。

 DRAMの大口価格は低下した後、横ばいとなっています。これから反転する可能性があるのか、横ばいが続くのか、注目されます。DRAMのスポット市況は今年7月に日本政府が韓国向け半導体材料3品目について輸出審査厳格化を打ち出してから一旦上昇しましたが、その後は下落が続いています。インテルのCPU増産が進んでいることや、5Gスマホの生産増加によって、スマートフォン、パソコン向けにDRAM需要は増えていると思われます。また、5Gが普及すると、データセンター向けサーバー用にもDRAM需要が増えると予想されます。このため、DRAM大口価格は今が底になっている可能性もあります。

グラフ2 NAND型フラッシュメモリの市況(2017年5月29日から)

単位:ドル、国内大口需要家渡し、TLC(注:2017年5月30日付で従来の多値品がTLCに変更された
出所:日経産業新聞主要相場欄より楽天証券作成)

グラフ3 DRAMの市況

単位:ドル、国内大口需要家渡し、4ギガビット(2018年6月26日までDDR3、それ以降はDDR4)
出所:日経産業新聞主要相場欄より楽天証券作成

グラフ4 DRAMのスポット市況

単位:ドル、小口渡し、現金
出所:日本経済新聞主要相場欄より楽天証券作成
注:2018年6月29日までは4ギガビットDDR3型、それ以降は同DDR4型

3.ロジック半導体、NANDに続き、DRAM市場が回復し始めた

 前述の世界半導体出荷金額(単月)を、ロジック・ディスクリート他(ロジック半導体はCPU、マイコンなど、ディスクリートはトランジスタ、ダイオードなどの個別半導体)とメモリ(DRAMとNAND)に分解して四半期ベースの動向を見てみます。

 表2、グラフ5を見ると、ロジック・ディスクリート他出荷金額は、2019年1-3月期を底として回復に向かっています。これは、2019年9月の新型iPhoneや、2019年3月以降、韓国、アメリカ、中国、欧州などで始まった5Gの商用サービスに向けて発売された5G対応スマートフォンの生産増加に伴うものです。

 メモリを見ると、NAND販売金額は2019年1-3月期に前期比(2018年10-12月期比)で大きく減少して、その後2019年4-6月期に横ばいとなりました。この間、NAND市況は10~20%下落していますので、NAND販売数量は増加していると思われます。2019年7-9月期も販売数量は緩やかに増加したと思われます。NANDは過剰生産能力があったため、早めに大手メーカーが生産調整に入ったと思われますが、その効果が出てきたもようです。NAND大口価格も8月下旬から緩やかに上昇に転じています。このように、NAND市場は回復がはっきりしてきました。

 一方DRAM販売金額は、2019年4-6月期に底打ちして、2019年7-9月期に回復しました。DRAM大口価格が下がり続けていることを考えると、2019年1-3月期から4-6月期にかけて販売数量でも底打ちして増加に転じたと思われます。ただし、DRAM大口価格はまだ上昇していません。販売金額は底打ち反転しましたが、市況の上昇を伴っていないため、弱い回復と言えます。

 このように、ロジックとメモリとを分けて分析しても、半導体市場の底打ちと回復、再成長の動きがはっきりと見えるようになりました。

表2 半導体デバイス市場の中身

単位:100万ドル
出所:世界半導体出荷金額はWSTS(単月)、DRAM、NAND型フラッシュメモリ販売金額はTRENDFORCE、ロジック・ディスクリート他は世界半導体出荷金額からメモリ販売金額合計を差し引いて楽天証券算出。

グラフ5 半導体デバイス市場の中身

単位:100万ドル
出所:メモリ(DRAM+NAND)販売金額はTRENDFORCE、ロジック・ディスクリート他は世界半導体出荷金額(単月、WSTS)からメモリ販売金額を差し引いたもの

グラフ6 DRAM、NAND販売金額

単位:100万ドル
出所:TORENDFORCEより楽天証券作成