世界市場を左右する米中貿易協議の行方は?

 英FT紙の「対中関税一部撤回」報道は、9月に第4弾として15%の追加関税をかけた中国からの輸入品1,120億ドル相当が検討対象という内容です。撤回のために、米国も農産物の購入などを交渉しているとあり、まだ流動的のようです。11月中旬の米中首脳会談でまとまれば好材料ですが、FTの記事によって市場にすでに織り込まれたことから強い材料とはならないかもしれません。ただ、12月15日に予定されている第4弾の残り1,600億ドルの追加関税も見送りとなれば、相場を動かす強い材料になりそうです。さらに中国が要望している発動済み関税の全廃が合意に達すれば、米国や中国経済の好転だけでなく、世界経済にとっても大きなプラス材料となり、株高、ドル高の一段高が期待されます。

 そうなればドル/円は、112円を目指すかもしれませんが、米大統領選挙が1年後に控えていることから、トランプ大統領は一気に好材料を出さないことが考えられます。

 そして、米景気で重要なクリスマス商戦が控えていることから、9月の15%追加関税は撤廃せず、クリスマス商戦に影響する12月15日の第4弾の残りについては見送りとのシナリオも想定されます。この場合、マーケットは好感するでしょうが、相場を動かす大きな材料にならないかもしれません。

 米中貿易協議も大詰めに近づいていますが、11月中旬の米中首脳会議での合意までは事態はまだ流動的になりそうです。そして合意内容によっては10月のレンジ(106円台半ば~109円台前半)を抜け切らず、110円は遠い水準になるかもしれません。このままクリスマス相場に入ることもシナリオの一つとして考えておいた方がよいかもしれません。

 余談ですが、10月の出来事で驚いたことがあります。東京五輪のマラソンが札幌に突然変更になったことと、APECのチリ開催が中止になったことです。国際的なイベントが突然変更になることは初めて聞きました。突然変更せざるを得ないような事態が起こった、あるいは起こるかもしれないと考えると、環境問題と社会格差問題は来年2020年の大きなテーマになりそうです。