相場の転換点を暗示するローソク足とは?
10月末の終わり方は、月末ということもあり買い上げたポジションの調整(売り)によって1円以上押し戻された形となりましたが、10月の月足を見ると興味深い形となっています。
10月の値幅は3円弱ありましたが、始値と終値がほぼ同じ水準の108.05円近辺となっています。月前半は円高方向に約1円50銭の「行って来い」相場となり、月後半は円安方向への「行って来い」相場となりました。
「行って来い」相場とは、円高に行っても元に戻る相場のことです。これが円高方向にも円安方向にも起こったため、月間の動きでは月初めの始値と月末の終値とがほぼ同じ水準になりました。このような動きは、始値、終値、高値、安値という4つの値で表す「ローソク足」の中で「寄引同時線」(よりひきどうじせん)と呼ばれています。
このローソク足は、相場の転換点を暗示すると言われています。相場の高値圏で出現したときは下落へ、安値圏で出現したときは上昇へ転換することを暗示している可能性が高い足型と言われています。
一方で、買い方と売り方のパワーが拮抗(きっこう)しているときに、このような足型が出現することから、相場の勢いが小休止して一時的な均衡状態にあることを示唆しているとの見方もあります。その場合、相場の分岐点ではあるが、その方向を探る綱引きがしばらく続くということになります。
10月の前半は、米経済指標が悪化したため円高に動き、その後は米中貿易協議やBrexit(ブレグジット:英国のEU[欧州連合]離脱)の交渉などの政治イベントの進展期待から円安に。終盤には日米欧の金融イベントがあったことから上下に激しく動きましたが、結局、相場の方向付けをするまでには至らなかったということになります。
11月に入ると、米雇用統計やISM製造業景況指数が良かったこと、米中通商協議の進展期待が高まったことから、NYダウ平均株価が高値を更新。この米国株高を受けて、連休明けの日本株も年初来高値を更新しました。
そして、ドル/円はこの株高から108円台後半まで上昇しました。5日には英FT(フィナンシャル・タイムズ)紙が、米国による対中関税の一部撤回の可能性を伝えると、株は日米とも一段高となり、ドル/円は109円台前半まで上昇しました。果たして、108円の分岐点を上振れしたのでしょうか。それとも10月末の動きのように再び押し戻されるのでしょうか。
1ドル=108円が意味すること
1ドル=108円というのは、今年の年間値幅約8円強の半分当たりの水準です。半値というのは買い方と売り方の勢力が拮抗している水準ですから、今年の動きの中でも108円が分岐点の水準ということになります。今年も残り2カ月となりましたが、2カ月かけて110円、もしくは112円に上昇する可能性はあるのでしょうか。
11月は日米欧の金融政策委員会が開催されないため、米中貿易協議や景気動向が相場材料となります。米中貿易問題やBrexitの政治リスクが後退していることからドル買いの安心感がありますが、10月でかなり織り込まれたため一段高には、より強い材料が必要となります。