利下げならマーケット織り込み済みで、円高も限定的。しかし…
今回のFOMC(米連邦公開市場委員会)では利下げとの見方が大勢です。米経済は堅調との見方も根強いですが、16日に今回のFOMCの検討資料として公表された地区連銀景況報告(ベージュブック)は、米景気の基調判断を「わずかから緩やかなペースで拡大」とし、前回の「緩やかな拡大」から引き下げています。また、ISM製造業景況指数が好不況の境目とされる「50」を2カ月連続で下回るなど、製造業が弱含む動きが出ていることなどを背景に、マーケットでは利下げがかなり織り込まれています。
そのため、利下げ決定直後は、一瞬ドルは売られるかもしれませんが、その後は材料出尽くしから円高への動きも限定的となるかもしれません。そして、マーケットの目は、すぐに次回12月以降の利下げについてどのようなメッセージが示されるか注目が移ります。
前回9月の利下げでは、全会一致で決定したわけではなく、投票権を持つ10人のうち、2人が金利の据え置きを求めました。もし、今回の投票で利下げ決定になっても据え置きを求める投票者が前回よりも増えれば、12月の利下げ期待は後退し、ドル高に反応することが予想されます。
また、経済のリスク要因であった米中貿易摩擦が部分的合意とはいえ、進展する気配を見せていることから、リスクが後退したとFOMCは認識するのかどうか。そして、これまでの利下げ効果を確認するまでは「予防的利下げ」をいったん休止するのかどうかが注目点です。
つまり、12月利下げ期待を少しでも後退させるようなメッセージを発すれば、ドル買いに勢いがつく可能性があるのです。
もちろん、今回10月のFOMCで利下げ見送りとなれば、サプライズとなり、ドル高に拍車がかかります。しかし、利下げ期待後退や利下げ見送りは株にも影響するため、株安がドル高にブレーキをかける動きになりそうです。
一方で、部分的合意になったとはいえ、先送りとなった12月15日に予定されている対中追加関税など、米中首脳会談で合意文書に署名されるまでは事態の進展は不確実です。そのため、FRB(米連邦準備制度理事会)は現状の認識を変えない可能性もあります。
また、部分的合意をしてもこれまでの制裁・報復関税が残ったままであれば、経済に対する下押し圧力は続くことになると判断し、「予防的利下げ」のスタンスが変わらなければ、11月中旬の米中首脳会談への期待と12月の利下げ期待との綱引き状態になり、ドル/円は上にも下にも動けない状態になるかもしれません。