土俵にとどまることの悩ましさ

 米大統領選挙に向けて、ある程度まで景気が下支えられる環境が続くとすると、ドル/円相場は105~110円レンジの上方、日経平均株価は2万円台前半に踏みとどまる目があります。しかし景気サイクル、投資サイクルの観点からは、あくまで終盤が永らえるだけであり、新たな上昇サイクルの始まりではないと判断しています。

 米国で短期金利より長期金利が低くなる逆イールド現象は1年半ほど先の景気後退のシグナルとされています(図3)。今回の逆イールドは、過去とは異なり、長短金利とも景気中立水準より低いところにあり、そのまま景気後退にはつながらないという見方があります。しかし、歴史的に確度の高かった黄信号の点滅には、それなりの敬意を払って、備えるべきと考えます。

図3:米イールドカーブ(長短金利差)と景気後退

出所:Bloomberg Finance L.P.より田中泰輔リサーチ作成

 投資家にとって、2020年の相場が土俵の半歩内側にとどまることは悩ましい問題となるでしょう。相場は底堅いのに、腰を入れて買うこともできないという状態が長引くのです。相場のリスクバランスは、上方に限定的で、下方に広いままです。一度土俵を割って仕切り直す、すなわち円高、株安によって買いポジションを再構築する好機を得るのと、どちらが良いかは、投資家それぞれのスタンスによります。

 2020年に買いたい人は、相場の上澄みを取りにいく短期勝負、後の下落リスクと比較考量した上での高利回り狙い、相場の上下動に頭を悩ませたくない積み立て投資などが考えられます。

 DIYのサイクル投資家であれば、こうした資産購入をするにしても、基本は既に持っているリスク資産を2020年の猶予期間に利益確定売りして、2021年辺りの買い場に備えることが基本スタンスとして推奨されます。