※本記事は2009年10月16日に公開したものです。

プロのファンドマネジャーの場合は

「投資が上手くなるには、どのようなトレーニングをすればいいのですか?」と、ある人から質問を受けた。ありふれた質問のようにも思うが、過去に記憶がない。正直なところ、適切な答えがあるなら、まず筆者自身が切実にそれを知りたい。

 プロのファンドマネジャーの場合、どのようなトレーニングがあるか。

 信託銀行や投信投資顧問会社のファンドマネジャーの場合、トレーニングの内容は知識の詰め込みと運用に対する慣れの二つに分類できそうだ。

 株式のファンドマネジャーの場合だと、ファンドマネジャーになる以前にアナリストの経験をさせる運用会社が多い。この時期に、企業分析、経済分析、ファイナンス(金融論)の基礎、などを勉強させて、その後にファンドマネジャーに登用される。

 アナリストをいわばファンドマネジャーの二軍とするような人事ローテーションをあまりに露骨に行うと、アナリスト部隊のモチベーションが下がるといった問題が生ずることもあるが、ある程度の知識を身に着けさせてからファンドマネジャーに登用するケースが多い。

 ただし、企業分析の経験を積んで証券会社のアナリストのようなレポートが書けるようになっても、たとえば、どの銘柄を、どのような「ウェイト」と「タイミング」で買って、どのようにポートフォリオを作るといいのか、ということについては判断基準が分からない場合が多いので、「ポートフォリオの作り方・メンテナンスの仕方」については、運用の部署に着任してから覚えることが多い。

 実際には、先輩ファンドマネジャーの仕事の様子を見たり、仕事の手伝いをしたりしながら、情報の収集方法やポートフォリオの作り方・メンテナンスの仕方を見よう見まねで覚えていくのが一般的だ。

 ファンドマネジャーの仕事は「同じポートフォリオを持つと同じ結果が出る」ので、先輩のポートフォリオに似たポートフォリオを作って先輩達と同じように情報収集活動をしていると仕事をしているように見える。悪く言うと、何も役に立つことを考えていなくても、「それらしいポートフォリオ」を持って時々売り買いしていると、それだけで結構様にはなる。加えて、先輩達の平均パフォーマンスが市場平均を下回ることが多いのだから、割り切ってしまうと気が楽だ。

 結局、何ら知識的な追加を得ずに、ポートフォリオを持っている状態に慣れただけでファンドマネジャーとして一人前になったような顔をしている場合もあるように見受ける。

 そうは言っても、それぞれの組織の投資哲学に合った企業分析の方法論と、ポートフォリオの作り方については、ある程度の方法論を教える必要はある。

 かつての筆者の場合は、業績予想の修正の評価の仕方、株価の高安の判断方法、それにポートフォリオの状態(特にリスクの大きさと性質)の見方とコントロールの仕方については、後輩ファンドマネジャーに知識を伝える努力をしていた(少なくとも「努力しているつもり」ではあった)。