10月に注目したい新興株の動き

 新興株の雰囲気変化、その判定基準は「売買が増えるかどうか」です。極度に低下した流動性が回復に向かうのは、いつになるのでしょうか…。9月は指数で見れば上昇したものの、マザーズ市場の1日平均売買代金は前月比15%減。日経平均のブルベア型ETF(上場投資信託)や、狂喜乱舞のコロプラ相場などへ短期資金が向かい、新興株は蚊帳の外でした。

 東証1部の売買ボリュームは底入れしたようにも見えますが、9月に個人投資家が買いポジションを積み上げた銘柄が何だったか? これを検証すると、「日経平均が上がった」という喜ばしそうな話が、実は個人投資家にとっては不幸なんじゃないかとすら思えてきます。

 個別株にETFも加えた全上場銘柄の中で、9月末時点で信用買い残が最も多い銘柄は何か? これを金額ベース(9月27日時点の信用買い残×9月27日終値)で計算してみました。結果、ダントツがSBG(9984)です。投資先の米ウィーワークのIPO(新規公開株)を巡る誤算(結局、IPO撤回を表明)が続き、SBG株もダダ下がり。9月末の信用買い残は2,315万株と今年最大に積み上がり、金額に直すと「1,008億円」と信じられない額になっています。この金額に相当する“塩漬け株”が作られたわけで、SBGのリバウンド抜きに個人投資家のマインド改善は無理と言えます。

 ちなみに2位は…日経平均ダブルインバースETF(1357)。9月に日経平均が意外高を続けるなか、「日経平均が下がるだろう」と想定してこれを買った投資家が急増しました。ダブルインバースETFの信用買い残は5,020万口と、2014年の上場来で最高。信用買い残は金額ベースでは529億円で、これもマザーズの信用買い残トップ3(サンバイオ、そーせい、アンジェス)の合計と同等。そして、このポジションも“塩漬け株”と化しています。「日経平均が下がったら儲かる」投資家が山のようにいます。

 個人投資家の信用買い残の評価損益率だけ見ると、9月は改善方向でした。8月末が▲15.9%だったのに対し、4週連続で改善して9月末は▲13.5%。ただ、それでも水準が低すぎる…昨年2018年の年間平均▲10.2%よりも状況は悪いままです。2018年といえば、東証マザーズ指数が年間▲34%と、アベノミクス相場以降で最悪だった年。その年の平均すら下回っているわけで、急に新興株が良くなる根拠は見当たりません。

 ひとまず、現状の個人投資家のムードを改善させるには「1.SBGが明確にリバウンドすること」「2.日経平均が明確に下がること」が大事に見えますが、2.が起きてしまうと新興株も連れ安するでしょうから2.は却下。となると、残るはSBGのリバウンドだけですかね(ということは、米ハイテク株の上昇次第?)。

 最後に…時期的な経験則を調べますと、過去10年の東証マザーズ指数の10月の月間パフォーマンス平均は「▲1.4%」。10月は分が悪そうですが、11月は同「+3.3%」、12月は同「+1.9%」と好成績を残しています。いわゆる年末のラリー発生、この経験則に淡い期待を抱きつつ、10月は予想外の調整などで生まれた押し目を待つ慎重スタンスが良さそうです。