米欧は金融緩和政策を継続も、一枚岩ではなくなった
9月の教訓としては、日米欧の金融政策について、予想外のタカ派的な色合いが発せられたということです。その結果、欧米が利下げをしたにもかかわらず、欧米の金利は上昇、ユーロ高、ドル高となりました。
まず、ECB(欧州中央銀行)については、前回のコラムでも触れましたが、金利を現在の▲0.4%から▲0.5%に引き下げ、さらに、2018年12月に停止していた量的緩和を11月以降再開することを決定しました。
加えて先行きの方針(フォワードガイダンス)について、「2%弱の物価目標の達成が見通せるまでは、時期にこだわらずに低金利政策を続ける」方針を示すなど、かなり突っ込んだ総合的な金融緩和政策を決定しました。
ところが、量的緩和再開について、ドイツやオランダだけでなくフランスやオーストリアなど、理事会メンバー25人のうち、約10人が慎重か反対だったことが分かりました。また、マイナス金利の深堀りについても批判の声が聞こえてくる状況となっています。
そして、FRB(米連邦準備制度理事会)は0.25%の利下げを決定しましたが(政策金利1.75~2.00%)、投票権を持つ10人のうち、2人が金利の据え置きを求めました。全会一致の利下げではなかったということです。
さらに年内の利下げの可能性については、パウエルFRB議長は記者会見で「経済がさらに弱くなれば、積極的な対応が適切だ」と説明し、追加利下げにも柔軟な姿勢を示しましたが、FOMC(米連邦公開市場委員会)参加者が予想する今後の政策金利見通しについては意見が分かれました。
17人の参加者のうち、あと1回の利下げを見込むのは7人と半数に満たない見通しとなりました。この見通しに対して、マーケットは先行きについてタカ派的と捉えました。
これら欧米の金融政策委員会のタカ派色がにじみ出る結果を受けて、投資家は8月の利食いに走りました。米10年債金利は1.6%台から1.9%へ上昇し、ドル/円も107円台から108円台半ばまで上昇しました。
ユーロ/ドルは総合的金融政策の決定を受けて、一時1.09ドル台前半まで売られましたが、理事会の見方が分かれていることが判明すると、1.11ドル台まで上昇。ユーロ/円も117円台から120円台まで上昇しました。
9月の欧米の金融政策委員会によって、委員会内部は一枚岩ではないということが分かったため、マーケット参加者は、今後も金融緩和が続くのかと素直に期待を持てなくなりました。よほど経済環境が悪化すれば、緩和期待は再び膨らむかもしれませんが、現時点では動きづらい状況となりました。
一方で、米中通商協議の不透明感やユーロ圏の景気減速懸念から、金融緩和は当分ないとも判断できないことから、8月の利食いが一巡すると、金利やドル/円の動きは、同じ方向を追いかけるのではなく、元の水準に戻ろうとする動きも見せています。