2019年9月のドル/円相場は波乱なく終わる?

 9月のドル/円は、結局、「通貨大乱」とはならずに終わりそうです。

 相場の月間値幅で見ると、8月は約4円90銭、これまでのところ9月は約2円70銭と、8月の6割弱の値幅となっています。

 8月は、日米欧の金融政策委員会開催はなかったものの、元安誘導疑惑、米中通商協議の行方、報復関税合戦と中国絡みの要因によって円高が進み、ドル/円は109円台から104円台に下落し、106円台前半で月を越えました。

 9月のドル/円は、106円台前半で始まり、一時106円を割る場面もありましたが、中旬以降の日米欧の金融政策委員会を控えて底堅く推移しました。

 その金融政策委員会では、欧米と日本の金融政策の違いが際立ったため、日銀の委員会終了直後は円高に振れましたが、欧米の理事会内部で先行きの見方が分かれていることが判明したことから、ドル高、ユーロ高となり、ドル/円は108円台半ばまで円安が進みました。

 米中絡みの要因は、米中通商協議暫定合意の報道がドル/円を押し上げる要因となりましたが、その後は実現可能性について不透明感が広がり、円安要因としては力不足になっています。

米欧は金融緩和政策を継続も、一枚岩ではなくなった

 9月の教訓としては、日米欧の金融政策について、予想外のタカ派的な色合いが発せられたということです。その結果、欧米が利下げをしたにもかかわらず、欧米の金利は上昇、ユーロ高、ドル高となりました。

 まず、ECB(欧州中央銀行)については、前回のコラムでも触れましたが、金利を現在の▲0.4%から▲0.5%に引き下げ、さらに、2018年12月に停止していた量的緩和を11月以降再開することを決定しました。

 加えて先行きの方針(フォワードガイダンス)について、「2%弱の物価目標の達成が見通せるまでは、時期にこだわらずに低金利政策を続ける」方針を示すなど、かなり突っ込んだ総合的な金融緩和政策を決定しました。

 ところが、量的緩和再開について、ドイツやオランダだけでなくフランスやオーストリアなど、理事会メンバー25人のうち、約10人が慎重か反対だったことが分かりました。また、マイナス金利の深堀りについても批判の声が聞こえてくる状況となっています。

 そして、FRB(米連邦準備制度理事会)は0.25%の利下げを決定しましたが(政策金利1.75~2.00%)、投票権を持つ10人のうち、2人が金利の据え置きを求めました。全会一致の利下げではなかったということです。

 さらに年内の利下げの可能性については、パウエルFRB議長は記者会見で「経済がさらに弱くなれば、積極的な対応が適切だ」と説明し、追加利下げにも柔軟な姿勢を示しましたが、FOMC(米連邦公開市場委員会)参加者が予想する今後の政策金利見通しについては意見が分かれました。

 17人の参加者のうち、あと1回の利下げを見込むのは7人と半数に満たない見通しとなりました。この見通しに対して、マーケットは先行きについてタカ派的と捉えました。

 これら欧米の金融政策委員会のタカ派色がにじみ出る結果を受けて、投資家は8月の利食いに走りました。米10年債金利は1.6%台から1.9%へ上昇し、ドル/円も107円台から108円台半ばまで上昇しました。

 ユーロ/ドルは総合的金融政策の決定を受けて、一時1.09ドル台前半まで売られましたが、理事会の見方が分かれていることが判明すると、1.11ドル台まで上昇。ユーロ/円も117円台から120円台まで上昇しました。

 9月の欧米の金融政策委員会によって、委員会内部は一枚岩ではないということが分かったため、マーケット参加者は、今後も金融緩和が続くのかと素直に期待を持てなくなりました。よほど経済環境が悪化すれば、緩和期待は再び膨らむかもしれませんが、現時点では動きづらい状況となりました。

 一方で、米中通商協議の不透明感やユーロ圏の景気減速懸念から、金融緩和は当分ないとも判断できないことから、8月の利食いが一巡すると、金利やドル/円の動きは、同じ方向を追いかけるのではなく、元の水準に戻ろうとする動きも見せています。

9月は相場一巡。今後は欧州リスクに注視

 米10年債金利は1.9%台へ上昇した後、再び1.6%台まで下落しました。ドル/円も108円台半ばでUターンし、107円台に下落しました。ドル/円の直近の動きは米長期金利との連動性が高かったことから、米長期金利が再び1.9%台へ上昇しない限り、ドル/円の108円台は重たくなるかもしれません。

 9月は結局、債券も為替も8月の動きを利食った動きであり、これは「往って来い」の相場となったことから、一巡した格好となりました。

 ドル/円は、8月初めに109円台から105円割れとなりましたが、その後は105~107円のレンジで推移していました。そして、9月に入ると、そのレンジが上方に動き、107~109円に入ろうとしましたが上値は重たそうです。

 10月は、このレンジが107~109円にとどまるのか、あるいは上値の重たさを引き継ぎ、106~108円に入るのかどうかを見極める月になりそうです。レンジを動かす要因としては、米中通商協議の行方と金融緩和の継続を左右する経済動向。そしてその経済動向は米中通商協議に影響を受けるという構図になっています。

 そしてもう一つの要因が、欧州リスクです。23日に発表されたドイツの9月総合PMI(購買担当者景気指数)は7年ぶりの50割れとなり、製造業は10年ぶりの低水準に落ち込みました。この結果を受けてドイツ、フランスの金融姿勢が変わるのでしょうか。欧州の景気減速はユーロ、ユーロ/円を一段安に追い込み、ドル/円の円高を後押しするかもしれません。

 また、Brexit(ブレグジット:英国のEU[欧州連合]離脱)もポンドの波乱要因です。いよいよ10月の期限が迫ってきます。ポンド/円が下落すれば、ドル/円の円高圧力となります。10月は欧州が熱くなりそうです。