報道による印象のちがい
8月27日に5年に一度行われる公的年金の財政検証の結果が発表された。通例なら6月に発表されていたので、参議院選挙の前の発表を避けたのではないかといった憶測があるが、本稿では論じない。公的年金について個人はどう考えたらいいのかに集中しよう。
今回の財政検証に対する報道は、同じ対象に対して大きく反応が分かれた。
以下の写真は、「読売新聞」、「朝日新聞」、「日本経済新聞」の8月28日朝刊の見出しだ。
【8月28日、朝刊3紙の一面トップ見出し】
「読売新聞」は、経済が順調な場合に、将来、公的年金が現役世代の収入の5割以上を確保できると、政府が最初に述べたいであろう結果を見出しにした。
他方、「朝日新聞」は、財政検証が前回よりも改善していないことと、将来の年金支給額が2割減ることを強調した。読売新聞とは随分印象が違うが、所得代替率(注:後で説明します)は現状が61.7%で、これが最も楽観的な経済見通しの下でも将来51.9%に(令和28年に)下がって下げ止まるということなので、朝日新聞もおおよそ同じ結果を違った印象で伝えているにすぎない。
一方、日本経済新聞は、現在20歳の人が、将来、現在の65歳と同じだけの公的年金を受け取ろうとする場合、68歳(正確には68歳9カ月)まで年金の受給開始を繰り下げる必要があると表した。公的年金は、支給開始を1カ月繰り下げると0.7%ずつ支給額が増える(現状では70歳まで繰り下げられる)。随分捻った伝え方だが、若者は将来、現在の高齢者よりも長く働いて遅く年金を貰い始めないと辻褄が合わなくなることを伝えている点で「アドバイスとして受け取るなら」参考になる見出しの打ち方だと言える。
多くの記事と同様に、どの新聞も官庁の同じ発表を伝えている訳だが、同じ話でも伝え方によって印象が大きく変わることのサンプルとして印象的だ。