経済成長「0%」だと、年金額は現役時代の収入の5割割れ
財政検証では、6つの経済成長シナリオごとに将来の受け取り水準がどう変化するか、試算が明示されている。
政府が使う指標は「所得代替率」。年金がどれだけ給与収入の代わりになるかを現役世代の収入を100%として表す。2019年版では、現役男性の手取り平均35.7万円で、夫婦2人の年金22万円(夫婦2人の基礎年金13.0万円と夫の厚生年金9.0万円を合計)を割った61.7%が所得代替率だ。
ベストシナリオは「経済成長と労働参加が進むケース」。内閣府が成長実現ケースとする年率0.9%で経済成長が続き、物価上昇率が政府・日銀目標の2.0%で推移し、女性や高齢者の就労が増える場合だ。所得代替率は51.9%に低下するが、2019年に比べて15.9%の減少にとどまる。
経済成長率を0.4%、物価上昇率を1.2%に落しても、所得代替率は50.8%と、政府が年金改革で掲げた「現役世代の半分以上」に相当する50%をクリアできる。
ただ、経済成長率が0%、物価上昇率が0.8%だと2058年度に所得代替率が44.5%に低下する。
ワーストシナリオとして設定されたのは、経済成長率マイナス0.5%が続くケース。2043年度に所得代替率が50%に低下し、その後も制度を修正しなければ2052年度に年金積立金がゼロになる。この場合はまだ生まれていない子供も含め、将来の現役世代の保険料と税金で賄える所得代替率は36~38%しかない。2019年比で最大41.7%の大幅減少だ。
今回の試算では、現役労働者による保険料収入を左右する就業率は2040年推計で60.9%。2017年実績は58.8%なので無理のない数字だろう。