毎週金曜日夕方掲載

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1.2019年6月の世界半導体出荷金額は前年比17.7%減、メモリ市場は大底入れか

 今回の特集は、半導体製造装置です。半導体市場と半導体製造装置市場を概観し、この分野への投資について考えます。

 まず、半導体市場の最近の動きを見て行きます。2019年6月の世界半導体出荷金額(単月)は、前年比17.7%減の345億3,100万ドルとなりました(表1)。前年比のマイナス幅は4月の18.0%減に次ぐ深いものとなりました。

 一方で、前月比は5月7.2%増に続き、6月4.9%増と2カ月連続で増加しました。グラフ1は3カ月移動平均で見た世界半導体出荷金額の推移ですが、底打ち感が出始めていることが分かります(今少し数字を確認する必要はあります)。

 世界半導体出荷金額の中身を見ると、興味深いことが分かります。四半期ベースの世界半導体出荷金額(単月)をNAND型フラッシュメモリ+DRAMのメモリ販売金額とロジック・ディスクリート他に分けたものを見ると、ロジック・ディスクリート他出荷金額は前年比はややマイナスですが高水準横ばいで推移しています(表2、グラフ2、グラフ3)。ロジック半導体の生産には、5G対応スマホのアプリケーションプロセッサー(CPUその他の半導体、電子部品を統合したモジュール)の生産、パソコン用CPUの増産が寄与していると思われます。

 一方、DRAM、NANDの販売金額は、いずれも前年比では大幅減が続いています。2019年4-6月期のDRAM販売金額は前年比42.2%減、NAND販売金額は同33.8%減です。ただし、DRAMは1-3月期比で減少が続いているのに対して、NANDは1-3月期比で横ばいとなっています。6月15日の停電による工場停止により、東芝メモリと同盟関係のウェスタンデジタルのNAND販売金額が減少し、マイクロンも減産しましたが、それを吸収する形でサムスンが販売を伸ばしました。需要がないところでは販売は伸びないので、価格低下が需要増加を引き起こした可能性があります。グラフ3と後述するNAND市況の上昇(まだわずかではありますが)を合わせて考えると、NAND市場は大底を入れつつある可能性があります。

 またDRAMも後述のようにスポット市況が上昇していることを考えると、大底入りが近くなってきた可能性があります。

表1 世界半導体出荷金額(単月)

単位:100万ドル、%
出所:WSTSより楽天証券作成。

グラフ1 世界半導体出荷金額(3カ月移動平均)

単位:1,000ドル
注:2015年3月から「アジア太平洋・その他」から「中国」を分離
出所:SIA(米国半導体工業会)より楽天証券作成

表2 半導体デバイス市場の中身

単位:100万ドル
出所:世界半導体出荷金額はWSTS(単月)、DRAM、NAND型フラッシュメモリ販売金額はTRENDFORCE、ロジック・ディスクリート他は世界半導体出荷金額からメモリ販売金額合計を差し引いて楽天証券算出。

グラフ2 半導体デバイス市場の中身

単位:100万ドル
出所:メモリ(DRAM+NAND)販売金額はTRENDFORCE、ロジック・ディスクリート他は世界半導体出荷金額(単月、WSTS)からメモリ販売金額を差し引いたもの

グラフ3 DRAM、NAND販売金額

単位:100万ドル
出所:TORENDFORCEより楽天証券作成

表3 NAND型フラッシュメモリの売上高と市場シェア

単位:100万ドル
出所:TRENDFORCEプレスリリースより楽天証券作成
注1:2017年2Qの伸び率に合わせて2017年1Qの東芝と合計を修正した。
注2:2017年4Qよりメーカー名に「その他」が表記されたことに伴い、2017年3Qの「その他」「合計」を4Q伸び率より計算して表記した。
注3:四捨五入の関係で合計が合わない場合がある。

表4 DRAMの売上高と市場シェア

単位:100万ドル
出所:TRENDFORCEプレスリリースより楽天証券作成
注:四捨五入の関係で合計、比率が合わない場合がある。