トランプ大統領は「フーバー大統領の再来」なのか
米中貿易戦争の長期化が不安視される中、「トランプ時代の景気は1930年代のように悪くなりそうだ」(The Trump era could wind up like the 1930s/8月23日のMarket Watch)との見方も出ています。
トランプ大統領は、就任前から「自国優先主義」、「保護貿易主義」、「移民排他主義」などの面で「フーバー大統領と似ている」と言われてきました。ハーバート・フーバー第31代大統領(1929年~1933年)は、「米国史上で最も保護主義な大統領」と呼ばれてきました。
投資で成功し富裕な共和党ビジネスマンだったフーバー大統領は、1929年3月の大統領就任まで選挙を経て公職についた経験はなく、ワシントン(政治)に縁はありませんでした。フーバー大統領はその就任式で「われわれアメリカ人は、どの国の歴史にも見られなかったほど貧困に対する最終的勝利に近づいている」と演説しましたが、その7カ月後の10月に米国株式は「大暴落」に直面。1930年から米国と世界が「大恐慌」入りするきっかけとなりました。
フーバー大統領の景気対策は後手に回ったとされ、国内産業(特に農業)を保護する目的で輸入関税率を広範に引き上げ、外国の報復関税で貿易量は縮小傾向となりました。また、米国人の雇用(特に白人労働者)を優先するため、約50万人のメキシコ人労働者を強制帰国させた移民排斥政策でも知られています。
こうした失策で、1932年の大統領選挙では対立候補(民主党)のフランクリン・ルーズベルト氏(第32代大統領)に40州で敗北する歴史的大敗を喫し再選を果たすことができませんでした。その後、景気悪化を受けて勢力を強めたナチス(国家社会主義ドイツ労働者党)率いるドイツが新興勢力として再び台頭。世界は第2次世界大戦に向かいました。
トランプ大統領はフーバー大統領と並び称されるほどの「保護貿易主義者」であるだけでなく、ホワイトハウスでの高官との議論や官庁との調整、報道官を介せずツイッターで政策や政策転換を発表して世界市場を乱高下させています。
市場から「予測が困難である」、「市場心理が悪化しやすい」、「景気の『気』が鈍化しやすい」と不安視される背景には、世界がかつて向き合ったことのない大統領の性格や特徴が潜在リスクとして無視できない状況は目先変わりません。