カルテット運用法はGPIF型運用法よりも優勢

 上述したように、資産運用を検討するにあたっては、「異なる音色」を奏でる資産を組み合わせる「四重奏」(カルテットによるハーモニー)を意識いただくのが良いと思います。この場合の「ハーモニー」とは、「調和」というよりも「お互いのリスク(リターンのブレ)を和らげ合う分散投資効果」と考えています。

 なお、国内の公的年金うち、厚生年金と国民年金の積立金の管理・運用を行っているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、2014年から株式5割(国内株式25%+外国株式25%)・債券5割(国内債券35%+外国債券15%)で構成する資産配分を「基本ポートフォリオ」(基準)にして運用を実施しています。

 約160兆円に及ぶ総資産を運用するGPIFは、流動性(資産規模)を考慮してJ-REITを含むオルタナティブに投資できる額は微々たるものとされます。図表4は、GPIFの基本ポートフォリオ(上記した資産配分の基準で毎年末にリバランスを想定)をベースに運用したケースを検証したパフォーマンス(円)と、カルテット運用法のパフォーマンス(円)を比較したものです。カルテット運用法の方が優勢で、金やREITを組み入れた効果が表れていることがわかります。

図表4:カルテット運用の長期パフォーマンス(円)

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2003年12月31日~2019年8月21日)
※各種総収益(配当、クーポン、分配金込み)指数を都度の為替で円換算した(2003年末を100)
※カルテット運用法=国内株式×15%+外国株式×15%+国内債券×10%+外国債券×15%+国内REIT×15%+外国REIT×15%+金×15%(全て円換算/各年末にリバランスを想定)
※GPIF基本ポートフォリオ運用法=国内株式×25%+外国株式×25%+国内債券×35%+外国債券×15% (全て円換算/各年末にリバランスを想定)
※上記は市場実績であり、将来の投資成果は保証しません。売買コストは考慮していません

 個人投資家が構築する資産運用の「コア・バランス」に関しては、REIT(上場不動産投資信託)や金なども積極的に組み入れることで、リスク分散効果を高めることが可能だと思います。こうしたグローバル分散投資を実践するには、各種資産(市場)の平均市場指数に連動を目指すインデックス(市場指数)連動型の公募投資信託やETF(上場投資信託)を活用することをお勧めします。

 令和時代の資産運用では、リターンやリスクだけでなく「コスト」を意識しながらポートフォリオを構築していくことが大切だと考えています。

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