「裁定買い残」は4,042億円まで低下、「裁定売り残」は1兆3,919億円に増加。外国人投機筋の買いポジションは整理され、売りポジションが積みあがった状態

 近年の日経平均および裁定買い残は、以下のように推移しています。

日経平均と裁定買い残の推移:2007年1月4日~2019年8月19日(裁定買い残は2019年8月9日まで)

注:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成

 裁定買い残は、2007年以降でみると、3,000億~6,000億円まで減少すると、増加に転じていました。リーマン・ショック後の安値(2009年)、ブレグジット・ショック後の安値(2016年)で、裁定残は3,000億~6,000億円まで減少してから底を打っています。

 日経平均は、裁定買い残が減少している間(裁定売り残が増加している間)、つまり外国人が先物を売っている間は下落します。ところが、裁定買い残が増加に転じる、つまり外国人が先物買いに転じると、上昇に転じます。2007~2019年では、裁定買い残が3,000億~6,000億円まで減少したところで、日経平均先物を買えば、タイミングよく日経平均が反発に転じ、利益を得られる可能性が高かったと言えます。

 8月9日時点で、裁定買い残は、4,042億円まで低下しています。一方、裁定売り残は、1兆3,919億円まで積みあがっています。差し引きすると、裁定売り残が9,877億円、上回っています。これはとても珍しいことです。買い残が売り残より大幅に大きいのが普通だからです。

 裁定売り残の方が大きいということは、投機筋の先物ポジションが売りに傾いていることを示します。外国人投機筋の先物買いポジションはほとんど整理され、先物売りポジションが積みあがっている状態と考えられます。これは、短期的な需給指標として、「売られ過ぎ」を示唆しています。

 ここまで裁定買い残が減ったということは、外国人の投機筋は、リーマン・ショック時、ブレグジット・ショック時と同じくらい、日本株にネガティブと判断していることになります。ここからさらに悪材料が出ても、追加で大量の先物売りは出にくいと言えます。少しでもファンダメンタルズに改善の兆しが見えれば、外国人の先物買い戻しが出やすいといえます。